【家族がいてもいなくても】(701)自立のためのパドル - 産経ニュース

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家族がいてもいなくても

(701)自立のためのパドル

最近、身体(からだ)がいくぶんすっきりしてきた。とくに「背中のあたりがいい感じよ~」と言われる。

そればかりか、捨てようとしていた古いジーパンがはけるようにもなった。

それもこれもパドル体操のおかげ。気がつけば早半年。毎週、先生が音楽室にやってきて、ビシバシと指導してくれている。

最初はギクシャクしていた身体が、ついにスムーズに動き始めてきたという感じ。

小さな櫂(かい)の形をした「パドル」を手に、音楽に合わせて身体を動かすこの体操にどうも私はハマってしまったらしい。

「あの鐘を鳴らすのはあなた」とか「ズンドコ節」とか…。腕を回したり、腰をひねったり。曲ごとに目まぐるしく変わる動きに何とかついていっている。

ついでに、顔のリンパ流しをする方法も教わる。

つまり、身も心も若々しく、美しく、日々自助努力をしましょうね、というプログラムなのだ。

ちなみに、このパドル体操を考案したのは、間中寿美恵さんという女性。先日、私は、その彼女の那須の別荘に遊びに出かけた。

そこには、他に指導士の女性たちも来ていて、みんなで楽しいお茶会となった。

聞けば、間中さんはもともと体操の指導者だった。それが頸椎(けいつい)を痛めて、必死のリハビリ中に運動補助具として「パドル」を思いついたのだという。

つまり、彼女は転んでもただでは起きないタイプの人、ということ。即、器具の商標登録などをして、親しい仲間と「パドルジャークス体操協会」なるNPO法人を立ちあげるに至った。

それが二十数年前、50歳のとき、と聞いて私はもうあっけにとられてしまった。

目の前の彼女たちは、皆、背筋がシャキッ、お肌ツヤツヤ、動作機敏、天真爛漫(てんしんらんまん)…。

しかも、関東甲信越から東北へと、今もたゆまぬ普及活動を展開しているらしい。

私の先生は、彼女たちが「開拓」と呼ぶ普及活動の途上で、指導士の一人としてゲットされたとか。

思えば、これは「高齢者の高齢者による高齢者のための活動」とも言える。

自立した高齢者のあり方が、ここにあるゾ、という感じだ。

もうじき団塊世代が後期高齢者入りしていく。

これからは、「支えてもらう」から「当事者同士で支え合う」道しかない。私も彼女たちを見習って、背筋をもっとシャキッとさせねばと思うのだった。(ノンフィクション作家 久田恵)