会社も救った被災地支援の箸 福島・磐城高箸の高橋さん - 産経ニュース

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会社も救った被災地支援の箸 福島・磐城高箸の高橋さん

高級割り箸を手掛ける高橋さん。本社兼工場は廃校の利活用で購入した小学校の校舎だ=福島県いわき市 (芹沢伸生撮影)
高級割り箸を手掛ける高橋さん。本社兼工場は廃校の利活用で購入した小学校の校舎だ=福島県いわき市 (芹沢伸生撮影)

東日本大震災は11日で発生から10年半。福島県いわき市で高級割り箸などを製造する「磐城高箸(いわきたかはし)」の社長、高橋正行さん(47)は、起業後間もなく東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に見舞われた。一時は会社存続も危ぶまれたが、復興支援ボランティアの協力で窮地を脱出。「環境に優しい割り箸の役割は大きい」と商品開発に余念がない。

神奈川県横須賀市出身。30代に入ってから林業に就いた。いわき市に移住し、祖父が働いていた会社に入ると、林業の窮状を知った。「決算書を見たら会社は危機的状況だった」。原因は丸太の値崩れ。「1立方メートルの価格は昭和55年頃の約3万5500円をピークに、平成21年頃には8千円程度まで下落。安い外国産が入ったためだった」という。

需要を広げ、丸太の価格上昇につながる新事業の必要性を痛感し、間伐材などで作る割り箸に目を付けた。森の維持には樹木の過密を防ぐ間伐が不可欠。「間伐で出た杉を使うため環境に優しい。日本の『もったいない精神』を具現化できると感じた」。国内で消費する割り箸の95%以上は1膳1円以下の中国産で勝ち目はない。高級割り箸に絞って差別化を図ることにした。

22年8月に会社を設立し11月から試験製造に着手。本格操業のめどが立ったのは翌23年3月だった。その矢先、震災と原発事故が発生。割り箸の納入先から取引中止を通告された。放射線の被曝(ひばく)を危惧したためだった。「はしごを外されたが取引先は恨めなかった」。当時、県産の製材品に安全面で問題はなかった。

絶望の中で救いの手を差し伸べてくれたのが、デザイナー有志の復興支援グループだった。「震災で抱えた在庫を全部買い取り製品化して復興支援イベントで販売。売り上げは経費も取らず、全額を赤十字に寄付してくれた。一連の行動が衝撃的で『一緒に何か開発を』となった」。そして、できあがったのが「希望のかけ箸」だった。

岩手、宮城、福島の被災3県の間伐材を使った3膳のセットで500円。1セット売ると各県に50円ずつ義援金が入る商品は、グッドデザイン賞など権威のある賞も受賞した。23年11月の発売から8万5千セットを超える引き合いがあった。

その後も次々と商品を開発。高級割り箸はコロナ禍でも売り上げが落ち込まないという。近年は割り箸の不良品を細かくして使った枕も、杉の香りが評判になっている。

「『希望のかけ箸』がなければ会社は潰れていた。継続しているのは奇跡。被災地支援が自分の希望にもなった」。割り箸にこだわりながらも新たな希望を探し、これからも商品開発に情熱を注ぐ。(芹沢伸生)