英、イラク開戦で米説得に失敗 英元外交顧問が指摘 - 産経ニュース

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英、イラク開戦で米説得に失敗 英元外交顧問が指摘

ローレンス・フリードマン氏(本人提供、Trinidad Ball撮影)
ローレンス・フリードマン氏(本人提供、Trinidad Ball撮影)

【ロンドン=板東和正】米中枢同時テロ当時のブレア英政権(1997~2007年)で外交政策顧問を務めたローレンス・フリードマン氏(72)=英ロンドン大キングス・カレッジ名誉教授=が産経新聞のオンライン取材に応じ、米ブッシュ(子)政権が2003年に開始したイラク戦争について語った。ブレア元英首相は参戦にあたり、武力行使について国連の承認を得るよう米国に働きかけたが失敗したとフリードマン氏は指摘。参戦は英米関係を強化する上で「役に立たなかった」と回顧した。

ブレア氏は1999年4月、独裁者に対して国際社会は団結して立ち向かい、ときには干渉も必要だと訴えた「シカゴ・ドクトリン」と呼ばれる外交演説を米シカゴで行った。

演説の原稿作成に関わったフリードマン氏は、英国が当時、北大西洋条約機構(NATO)加盟国としてコソボ紛争で軍事介入に参加したことを挙げ、「ブレア氏は(他国の紛争や独裁政権に対応するため)強国には介入する責任があると信じていた」と述べた。

「ブレア氏はブッシュ氏から命令されてイラク戦争に参戦したのではなく、自ら必要と考えた。ブッシュ氏の操り人形ではなかった」と分析。対米追随姿勢が目立ったことでブレア氏は「ブッシュのプードル」と揶揄(やゆ)されたが、「事実と異なる」と強調した。

ただ、フリードマン氏はイラクへの武力行使に踏み切る過程で、英国は結果的に米国に追随する形になったとの認識を示した。具体的には、イラクの大量破壊兵器開発疑惑を調べる国連査察団の査察打ち切りを主張し、当時のフセイン政権による大量破壊兵器の保有を唱えた米国に従ったと指摘。「間違った判断だった」と批判した。

イラク戦争の経緯を調べた英国の独立調査委員会は2016年、「フセイン大統領(当時)が大量破壊兵器を持っている」との誤った情報を根拠に参戦したブレア政権の判断を「正当化できない」とする最終報告書を発表している。

また、フリードマン氏は「米国が国際社会から孤立することを危惧したブレア氏が当時、イラクへの武力行使をめぐり、国連の承認を得るように米国に働きかけたが、ブッシュ氏は(ブレア氏の意見を)取り入れずに行動した」と分析。「ブレア氏は結局、(国連の承認を得ることなく作戦実施に踏み切るという)本人が望まない結果に直面した」との見方を示した。

「ブレア氏の外交政策の最優先事項は米国との関係を維持することだった」とした上で、「(イラク戦争で)ブレア氏は米国の意思決定に影響を与えられると期待していたが、彼が望むほどはできなかった」と結論づけた。

また、イラク戦争後、同国で宗派対立の激化やイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国(IS)」の台頭を許したことに触れ「米英は(イラクをどう統治するかについて)戦争後の計画を立てておくべきだった」と批判した。

ローレンス・フリードマン氏 英国際戦略研究所(IISS)や英王立国際問題研究所の研究職などを経て、英ロンドン大キングス・カレッジ戦争研究学部名誉教授。専攻は国際紛争や安全保障で、ブレア英政権の外交政策顧問を務めた。2009年6月にはイラク戦争の経緯を調査する英国の独立調査委員会のメンバーに任命された。