接種1日7000人 楽天、会場運営ノウハウ「神戸モデル」を構築 - 産経ニュース

メインコンテンツ

接種1日7000人 楽天、会場運営ノウハウ「神戸モデル」を構築

イニエスタ選手も協力した大型看板。スタジアムの観客動員のノウハウをいかして作られた
イニエスタ選手も協力した大型看板。スタジアムの観客動員のノウハウをいかして作られた

楽天グループが新型コロナウイルスの大規模接種会場の運営ノウハウを構築した。5月から運営を担うノエビアスタジアム神戸(神戸市)を使った会場では、受け付けから接種までの所要時間を約3分間に短縮、1日最大7千人の接種を可能にした。楽天では、このノウハウをほかの自治体や団体にも提供し、ワクチン接種加速に役立てたい考えだ。

最短3分までの工夫

神戸の会場は、普段は一般立ち入り禁止のメインスタジアム下に設けられた。受け付けを済ませると、予診の事前チェックでは基礎疾患の有無などをファイルで色分け、円滑な予診につなげる。続く予診は対面だけでなく、リモート診察を全国で初めて導入。接種ブースはついたてで区切って2人同時に入室する設計で、接種スピードを上げた。

接種エリア前に立つ楽天メディカルジャパン副社長の前田陽さん。「すべてが初めての経験で手探りでノウハウを構築しました」と明かす
接種エリア前に立つ楽天メディカルジャパン副社長の前田陽さん。「すべてが初めての経験で手探りでノウハウを構築しました」と明かす

「受け付けから接種まで最短約3分。実は、予診の事前チェックから接種まで一度も座っていないって気付きましたか。体が不自由な方や体調の優れない方のためのバリアフリーの通路もありますが、一度も着席しないことで、立ったり座ったりの動作に時間をかけず、進み続ける印象を持ってもらうためです。接種を受ける人の身体的な、心理的な負担をなるべく少なくしようと工夫してきました」

楽天グループ内の製薬企業、楽天メディカルジャパンの副社長、前田陽さんが笑顔を見せた。「利用者の使いやすさを追求する考え方や、常によりよい方法に改善する視点、システムを誰もが運用できるようにマニュアル化する方法。接種会場の運営は初めての経験ですが、楽天の普段の事業の進め方で構築しました」

2週間で実現

5月中旬、楽天の三木谷浩史会長兼社長は、Jリーグチェアマンと全国知事会長とともに各チームのスタジアムを大規模接種会場として活用することを発表。楽天はスポンサーとなっているプロサッカーチーム「ヴィッセル神戸」の本拠地、ノエビアスタジアム神戸で、市や神戸大学などの医療機関と連携しながら産官学で接種会場を運営することになった。その後すぐ、楽天メディカル社員や新入社員約50人らを続々神戸に派遣、安全で効率的な会場運営を実現させるため、現場で何度もシミュレーションを重ねたという。

神戸市のワクチン接種対策室長、青石克明さんは「設置を決めてから、実施までわずか約2週間でしたが、民間のスピード感ある対応に驚きました。通常、まずは医療従事者の確保が課題になりますが、東京の医大との連携や、遠方の医師にも参加してもらえるオンライン予診の導入など、楽天のネットワークや実行力ならでは」と振り返る。同市では接種希望者に対する1回目の接種が9月中に完了する予定で、「産官学の連携があったからこそのスピード感」と話す。

イニエスタ選手も
イニエスタ選手が接種の準備を促す案内板
イニエスタ選手が接種の準備を促す案内板

「腕まくりの準備は大丈夫?」

ワクチン接種前に緊張する市民を和ませているのは、サッカー元スペイン代表の世界的スター、アンドレス・イニエスタ選手がヴィッセルのユニホームの袖をめくって、接種の準備を促す大型案内板。ほかの有名選手も要所に置かれた案内板に登場する。

普段から大人数の観客動員に慣れているスタジアムが、会場には大きくわかりやすい案内板が必要と考えて準備した。ヴィッセル神戸スタジアムエンターテイメント部長の菊地隆之さんは「接種会場には緊張して来られる人も多いと聞いて、なるべくリラックスできるような場所づくりを心がけました。選手たちも喜んで協力してくれました」と明かす。試合のない日には選手のロッカールームが接種後の経過観察のスペースに様変わりする。

「コロナが収束したら、応援に来るからね」

これまでサッカー観戦の経験がないという高齢者がワクチン接種後にこう言ってくれたこともあった。

「コロナ禍で、大変苦しい時期ではありますが、スタジアムにできることをやり続ける中で、新たにヴィッセルを応援しようという声もいただくようになった。前に進むためにも、ワクチン接種の促進に携わりたい」と菊地さんは力をこめる。

楽天ヴィッセル神戸の菊地隆之部長
楽天ヴィッセル神戸の菊地隆之部長

楽天は現在、神戸での経験を「神戸モデル」としてマニュアル化、自治体や外部の団体にもノウハウを提供している。東京都世田谷区の本社での職場接種でも、世田谷区民や近くの神奈川県川崎市、横浜市の市民も対象にしており、同区の担当者も「世田谷区は人口も多く、区民の接種機会が増えることはありがたい。区内の接種加速に貢献してもらっている」と喜ぶ。

楽天メディカルの前田さんは「社会全体の接種を加速させるために、民間にもできることがある。手探りで作り上げたノウハウが役に立つのなら、ぜひ役立ててほしい」と話している。