【美村里江のミゴコロ】日本昔話のまんじゅう - 産経ニュース

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美村里江のミゴコロ

日本昔話のまんじゅう

夏の盛り、仕事で埼玉県秩父市へ行った。

時節柄、感染対策に神経を尖(とが)らせつつ、気分は帰郷のように和んだ。出身の深谷市から程近く、幼少期からよくドライブなどを楽しみ、渓流釣りを始めてから新型コロナ流行前まで、毎年のように秩父の川へ夫婦で通っていた。とてもなじみ深い土地なのだ。

とはいえ、もっぱら自然好きで山方面へ向かってしまうので、市街地へ行ったのはかなり久しぶり。なんとなく記憶にあった街並みも、大人になってから歴史の情報とともに見ると違った良さが感じられた。

全体的に楽しく無事終了したが、内心そわそわしたものがあった。時間的に到底無理なのはわかっていたのだが、大好きな和菓子屋さんがあり、そこの「すまんじゅう」が頭をよぎって、久々に食べたい思いが湧いていたのだ。

まんじゅうなど珍しいものではない、他で食べればいいと思われるだろうが、このすまんじゅうだけは替えが利かない。名前の通り「酢」が皮に微量使われ、酸味などは抜けて良い香りとうま味だけ残っているのが特徴。このわずかに塩気のある皮がむっちりと肉厚で、甘さ控えめのみずみずしいあんをしっかりと支えている。

最大の特徴はなんといっても大きさだ。コンビニのあんまんを一回り大きくずっしりさせた感じで、「日本昔話」に出てくるようなビジュアル。小さい頃は丸々一つ食べきれず、大人になった現在もご飯代わりになるボリュームで、これが約150円。

そんな大まんじゅう、お客さんが買うのは3つ4つ…とはかぎらないのがすごいところだ。このお店で10個は当たり前。以前、年末に60個の包みを受け取っている方を目撃した(10個でも結構重いので、荷物持ち要員も帯同されていた)。

注文を受けてから蒸したてを包んでくれるシステムなので、他のお客さんと立ち話になる。そこで聞くと、親戚やご近所に頼まれて代表者が買いにくることが多いらしい。駅からすぐという場所でもなく車のお客さんがほとんどだが、サイズ、味、お値段ともに「類似品が少ない」というのは強い。

午後3時頃には売り切れてしまうこともあり、日持ちしないのでお土産であちこちに配るのも難しい一品。後ろ髪を引かれつつ帰京、こうして書いて余計に食べたくなってしまった。コロナ鎮火後にほお張りたいなあ。