【紀伊半島豪雨10年】流された村「忘れないで」元警察官の大上さん写真展(1/2ページ) - 産経ニュース

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紀伊半島豪雨10年

流された村「忘れないで」元警察官の大上さん写真展

平成23年9月19日に撮影した奥番地区の写真。集落が根こそぎ崩落した
平成23年9月19日に撮影した奥番地区の写真。集落が根こそぎ崩落した

10年前の紀伊半島豪雨で被災し、自治会も解散した和歌山県田辺市本宮町三越(みこし)の奥番(おくばん)地区。この地で記録写真を撮り続けてきた元県警警察官の写真家、大上敬史(たかし)さん(62)の写真展「流された村 奥番」が、本宮町本宮の「世界遺産熊野本宮館」で開かれている。災害直後の集落や自治会の解散式、その後の日々などを撮影した貴重な作品90点を展示。大上さんは「豪雨で『流された村』の存在を忘れないでほしい」と訴えている。

7世帯10人が暮らしていた奥番地区では、紀伊半島豪雨で地盤ごと崩れ落ちる「深層崩壊」が発生。豪雨の影響で1人が死亡し、住宅など9棟が全壊・流出した。

紀伊半島豪雨で被災した奥番地区を撮影し続けてきた写真家の大上敬史さん=和歌山県田辺市
紀伊半島豪雨で被災した奥番地区を撮影し続けてきた写真家の大上敬史さん=和歌山県田辺市

元田辺署地域課員だった大上さんは豪雨直後の平成23年9月19日、その地区にいた。切り立った崖の上に民家が「しがみつく」ように残っていたが、あとは一面の土砂だった。

同行した地区出身者の上司から「ここには寺があった」「ここには集会所…」と被災前の姿を聞いたが、想像するのは難しかった。それほどの壊滅的な被害に「奥番はもうだめだ。村の姿を写真に記録してくれ」と上司に依頼されていた。

大上さんは高校時代から写真に興味があり、警察官になって以降も世界遺産・熊野古道の風景などを撮り続けていた。「こうした歴史的な現場に立ち会うことは今後もないだろう」と思い、依頼を引き受けることにした。

岩石と土砂に埋もれた地区に通じる橋、安全のため設置された落下防止用のロープを伝って歩く住民…。凄惨(せいさん)な被害だったことを写真は語る。平成26年に警察官を退職した後も、年に数回は足を運んだ。奥番地区を記録した写真は着実に増えた。