逃走するひったくり犯を自転車で約1・5キロ追跡し、逮捕に貢献したとして、大阪府警阿倍野署は、大阪市東住吉区の警備員、児玉礼善(らいぜん)さん(18)に感謝状を贈った。児玉さんは高校時代、毎日往復約20キロを自転車通学していたといい、「培った脚力が生きてよかった」と語る。
7月20日夜、仕事を終えた児玉さんが、折り畳み自転車に乗って同市阿倍野区の交差点で信号待ちをしていると、後方から女性(27)の叫び声が聞こえた。「ひったくりや!紫色の服の人、捕まえて!」。直後、自転車に乗った男(44)が、目の前をすさまじい勢いで走り抜けていった。
突然のできごとに戸惑ったが、あたりを見回しても紫色の服の人はほかにいない。「紫色って自分やんか。指名を受けたし、やるしかない」。無我夢中で追いかけた。
1・5キロ近く追いかけ、男が左折しようと減速した隙に、児玉さんは速度を上げて先回りし道をふさいだ。お互い肩で息をしながら、盗んだかばんの引っ張りあいに。約15分の格闘の末、通りすがりの男性に通報を求めると、ようやく男もあきらめた。現金約3万8千円が入ったかばんは無事、女性に返却された。
児玉さんは高校時代、ボードゲームなどを楽しむ「インドア競技部」に所属する「文化系」だった。脚力を培ってくれたのは、自宅と学校の往復約20キロの自転車通学。帰宅時は趣味のプラモデルづくりに取りかかりたい一心で、速く走らせることもあったといい、「スピードには自信がある」と話す。
児玉さんは受け取った感謝状に「これまで表彰されたことがなかったので緊張したが、自分の力で捕まえることができてよかった」とはにかんだ。