《今年春、台湾産パイナップル輸入が話題になった》
日本で台湾産パイナップルの輸入が今年、2万トン以上と昨年の7~8倍に増えました。それまでは中国向けの輸出がほとんどでしたが、3~6月の最盛期を前に中国政府が台湾からの輸入を3月1日から検疫での問題を理由に突然、停止したのです。台湾の農家も農政当局も困り果てたのですが、日本の多くの方がパイナップル輸入の受け皿になりたいとして、救いの手を差し伸べてくれました。例えば日台をつなぐ日華議員懇談会の古屋圭司会長(元国家公安委員長)は、地元である岐阜県の大手スーパーチェーンに輸入を依頼してくれ、約200軒の店舗で販売されました。
福島県でも大手スーパーが台湾パイナップル祭りを開催して応援してくれました。芯までおいしく食べられる台湾産を、日本の消費者に幅広く喜んでもらえたのは幸いでした。災害支援に似た助け合いでしょうね。
《台湾でパイナップルは縁起のいい果物とされている》
中国語で「鳳梨(フォンリー)」と書くパイナップルは、地元の台湾語で発音すると「オンライ」、漢字を当てると「旺来」です。福を呼び寄せる縁起のいい言葉ですよ。その縁起を担いで、台湾では春節(旧正月)の飾りや商店などでの置物に使われます。
南国台湾はフルーツの宝庫です。マンゴーなど台湾産の果物もどんどん日本に輸出されるようになりました。現在は新型コロナウイルス禍で自由な往来はできませんが、その前の2019(令和元)年には延べ200万人を超える人が日本から台湾に渡航しました。観光で訪れた方々が台湾フルーツの味に親しみ、買い求めてくれるようになったのかもしれません。
《コロナ禍以前は高校生の台湾修学旅行も増えていた》
台湾への修学旅行は19年で計4万人にのぼりました。その5年ほど前は、日本から海外修学旅行先のトップは米国のハワイでしたが、19年までに台湾がその座につきました。近さでは韓国や中国なども候補ですね。ただ、保護者が安心して送り出せる渡航先として、台湾が選ばれるようになりました。神奈川県の場合、高校の海外修学旅行先で90%までが台湾だったそうです。一方、台湾には修学旅行の習慣はありませんでしたが、日本の提携校との交流などで19年に計1万人が日本を訪れています。
《10代の若者が自分の目で海外を見るのはいい経験だ》
まさに百聞は一見にしかずでしょう。日台の高校生同士が交流する場面など、たとえ言葉は通じなくてもカタコトの英語や身ぶり手ぶり、そしてアニメやゲーム、スポーツなどを共通言語にして、自分と相手を理解しあっているようです。未来をつくるのは若い人たちですね。
修学旅行のみならず、日台の若者がそれぞれ台湾や日本の大学や大学院に留学するケースも増えています。また、産経新聞が主催し、台北駐日経済文化代表処が共催している「日台文化交流 青少年スカラシップ」もいいですよ。作文やスピーチのコンテストで優秀な成績を収めた中高大学生を表彰する制度で今年で18回目になりました。
創設から続いていた入賞者の台湾研修はこの2年、中断せざるを得ませんでしたが、志ある日本の若者が多いと実感しています。修学旅行や研修旅行、留学や観光など、とにかくコロナ禍が一日も早く収束して、日台間が自由に往来できるようになることを待ち望んでいます。(聞き手 河崎真澄)