示された「ウィズコロナ」に歓迎と懸念 - 産経ニュース

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示された「ウィズコロナ」に歓迎と懸念

人通りもまばらな大阪・ミナミの道頓堀では、菅義偉首相の会見が映し出されていた=9日午後7時半、大阪市中央区(永田直也撮影)
人通りもまばらな大阪・ミナミの道頓堀では、菅義偉首相の会見が映し出されていた=9日午後7時半、大阪市中央区(永田直也撮影)

ワクチン接種などを条件に旅行や酒類提供を認める―。政府が9日、打ち出した新型コロナウイルス対応の行動制限緩和基本方針。示された「ウィズコロナ」のあり方に、コロナ禍で苦境に立つ関係者らからは「一歩前進だ」と歓迎の声が上がった。一方、コロナに翻弄された経験から、「方針が二転三転するのでは」と訝(いぶか)しむ声もあった。

「酒が出せるだけで客の入りは3倍にも4倍にもなる」。大阪市中央区の老舗フグ料理屋「清月」を経営する佐藤和貴さん(69)は基本方針に顔をほころばせる。

宣言下では、のれんをくぐった客が、酒が提供されないことを理由にすぐ退店する光景に何度も直面。赤字が続き、8月中旬から店を一時休業している。

11月ごろとされる行動制限緩和実施となれば、営業も再開するといい、佐藤さんは「フグがおいしくなる季節。なじみ客にひれ酒を楽しんでもらえる」と期待を込めた。

懸念する声もある。「(緩和で)感染者が爆発的に増えれば、再び飲食店が批判される」と話すのは、大阪・ミナミのバー「SubculBar『なぅ‼』」オーナーの加藤輝昭さん(40)。綱渡り状態の経営が続く店にとり、酒類提供が再開できるのはありがたい。ただ、新規感染を押さえ込めていない現状に「今、適切な判断なのだろうか」と指摘。一時的な対応にならないよう、「感染対策を怠る飲食店には罰則を与えるなど、厳しい対応も必要だと思う」とした。

都道府県をまたぐ移動についても、ワクチン接種などを前提に制限は撤廃されることになる。

観光名所・通天閣の運営会社「通天閣観光」(大阪市浪速区)の高井隆光社長は「観光客が増える起爆剤になるのは確か」と評価する一方、「感染が再拡大するかもしれないと思うと、複雑だ」とこぼした。

感染者が多い大阪を訪れることに負い目を感じる観光客も多く、「大阪」の地名が入った土産物の売れ行きは良くない。政府は基本方針で、「Go To トラベル」のような観光振興策も検討するとしたが、高井社長は「Go Toを始めるのは感染が落ち着き、皆さんが気分よく旅行できる状況になってからにしてほしい」と求めた。

大阪市浪速区の旅行業、日本旅行企画の山根全勝(まさかつ)社長は「Go Toが再開されても、積極的に利用を勧めることはしない」と断言する。

昨年、Go Toは感染再拡大で突然中止になり、キャンセル対応に追われた。人件費やパンフレットの印刷代、振込手数料などの経費についての補償はなく、結局は赤字を計上した。山根社長は「方針が二転三転するキャンペーンより、連休を増やす政策の方がありがたい」と話した。

基本方針は大規模イベントのあり方にも言及。ワクチン接種などを条件に、入場者数の上限緩和なども示している。音楽イベントを主催する業界団体の関係者は、「(緩和は)一歩前進。でもスパッと何かが急に変わることはない」と複雑な心境を語り、「世論が納得する時間を設けるべきだ」と地道な積み重ねの必要性を強調した。

家庭内感染の事例が出る中、教育現場も慎重だ。大阪府内の公立高校の教頭は「ワクチン接種は感染していないことの証明にはならず、気付かずに周囲に広げてしまうこともあるのではないか」と話した。