「あんた、生涯後悔するぞ」。あまたの凶悪事件を起こしてきた暴力団のトップが、法廷で言い捨てた言葉が波紋を広げている。市民を標的とした4つの襲撃事件に関与したとして、殺人罪などに問われた特定危険指定暴力団「工藤会」総裁、野村悟被告(74)に対する判決公判。極刑が言い渡された直後、野村被告は報復を示唆するようなセリフを吐き、警察当局は裁判関係者の保護の強化に乗り出した。この発言で浮き彫りになったのが、被告に恨まれ、命の危険にもさらされかねない裁判官の立場だ。裁判官経験者は「怖さはある」としながらも「どんな脅しにも屈しないという強い覚悟で公判に臨んでいる」と言い切る。
市民巻き込む凶悪性
野村被告の発言が重く受け止められる背景には、組織の凶悪性がある。工藤会は北九州市を拠点とし、ピーク時の平成20年末時点で、福岡県内には約730人の構成員がいた。銃器を使用し、一般の企業や市民を巻き込む事件を相次いで起こしており、同24年には指定暴力団の中でもより凶悪な団体とされる「特定危険指定暴力団」に全国で唯一指定された。