男性育休100% 知っておくべき大企業の危機感と戦略

男性の育児休業取得の向上に向けた動きが活発化している。国は生後8週間以内に最大4週間の休みを取得できることが柱の「改正育児・介護休業法」などを成立させ、企業は社内制度を拡充。大手を中心に取得率アップの事例も出始めた。一方で人繰りなどを理由に消極的な企業は少なくないのも実態だ。企業側の対応がカギとの指摘は強く、意識改革が求められそうだ。

社用スマホを一時返却

「じゃあ、育休取得の準備を進めよう」

3月に長女が生まれた積水ハウス財務部の山本竜平さん。昨年秋、上司から育休を取得するよう告げられた。

里帰り出産した妻が大阪に帰ってくるタイミングに合わせ、約2週間の休暇取得を決めた。取得の1カ月前には業務の引き継ぎ内容などを記入した計画書を担当部署に提出。山本さんは「休みを取りにくいという雰囲気はまったくなかった」と振り返る。

同社は平成30年、3歳未満の子供を持つ男性社員向けに最大4回まで分割して1カ月間の育休を取れる「イクメン制度」を開始。今年4月には、産後8週間は1日単位で何回でも休みを分割できるようにした。

ダイバーシティ推進部の森本泰弘部長は「経営戦略上、育休取得が重要との認識を管理層にも徹底させている」と説明。31年2月以降に3歳の誕生日を迎えた子供を持つ男性社員925人全員が、1カ月以上の育休を取得した。

「本気で育児に向き合えるようにした」という江崎グリコは子供の出生後6カ月以内に1カ月間の有給休暇取得を必須にする制度を昨年1月に導入。育休中は社用パソコンやスマートフォンを一時返却させる徹底ぶりで、男性社員の取得率は100%になった。

管理職には部下の育児参画をサポートする意義を学ぶ研修を実施。同社は「上司や会社が育休取得に前向きだという雰囲気を作ることが大事」と説明する。

「人繰りが…」中小は難色

国も男性の育休取得促進へ乗り出す。子供の誕生直後に父親が休みを取りやすくする「出生時育児休業(男性版産休)」を新たに設ける改正育児・介護休業法などが6月に成立し、来年度から順次施行する。子供が生まれてから8週間以内に計4週分の休みを取れるようになり、企業には従業員に育休取得を働き掛けるよう義務付ける。

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