【痛みを知る】手のこわばりに注意 文豪も描いた関節リウマチ - 産経ニュース

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手のこわばりに注意 文豪も描いた関節リウマチ

「関節リウマチ(rheumatoid arthritis)」は、関節の内側にあり、ヒアルロン酸を作っている滑膜(かつまく)の炎症によって、関節の腫れと痛みを引き起こす病気である。ギリシャ語で「流れる」を意味する「rheuma」に由来する。

関節リウマチはリウマチ性疾患の「汎発性(はんぱつせい)結合組織病」のひとつで、全身性の炎症によって多発性、進行性の障害を生じる。「全身性エリテマトーデス」や「皮膚筋炎」などもその仲間だ。原因は詳しくはわかってはいないが、免疫機能に異常が発生し、自身の体を攻撃してしまうと考えられている。

この病気はすべての人種でみられ、欧米での発症率が全人口の約1~2%なのに対し、わが国では0・3~0・5%(40万~60万人)とやや少ない。女性の発症が男性の3~5倍多く、40~60歳代にピークとなる。

明治元年生まれの徳富蘆花は、「不如帰(ほととぎす)」上篇五の四で、主人公・浪子のしゅうとめが持病の僂麻質斯(りうまちす、リウマチ)に苦しんでいる様子を「あのね、川島のおばあさんがね、僂麻質斯で肩が痛むでね、それで近頃は大層氣(き)むづかしいのですと」と描いている。わが国でも古くからこの病気を患っていた方が多かったのだと考えられる。

この病気の初期には、手のこわばり(〝朝のこわばり〟として知られている)を自覚する。その後、慢性的な炎症によって関節が腫れる。ただ、これは手や足の関節に多く、肩や股などの大きい関節の障害は少ない。

進行すると症状が複数の関節に及ぶようになり、発症後半年~3年を経ると、関節を構成している軟骨や骨が壊れて変形を生じる。指では「スワンネック変形」、足では「ワシ足変形」といった特徴的な変形がみられるようになるのだ。日常の動作にも支障がでるが、眠れないほどの強い痛みは少なく、持続的な鈍痛、運動時の痛みが主体となる。

病院、医院の待合室に車椅子が目立った半世紀前までは、非ステロイド抗炎症薬(ロキソプロフェンなど)や副腎皮質ステロイド薬によって痛みを軽くすることが治療の主役だった。しかし、関節破壊を抑えるのが十分ではないことに加え、副作用の問題もあり、現在、治療の中心はメトトレキサート(リウマトレックス)やエタネルセプト(エンブレル)、トシリズマブ(アクテムラ)といった免疫抑制薬になっている。その他、インフリキシマブ(レミケード)などの生物学的製剤による劇的な効果も確認されている。

ペインクリニックでは、これらの薬の使用に加えて、関節内への局所麻酔薬の注入やさまざまな神経ブロック療法、漢方薬の投与などにより、良い効果をあげている。

漢方薬では、早期の痛みの緩和に「麻黄」を含む「越婢加朮湯」や「麻杏苡甘湯」、慢性期で免疫調整作用を期待する場合には柴胡剤の「柴苓湯」などを用いる。

森本昌宏(もりもと・まさひろ) 大阪なんばクリニック本部長。平成元年、大阪医科大学大学院修了。同大講師などを経て、22年から近畿大学医学部麻酔科教授。31年4月から現職。医学博士。日本ペインクリニック学会名誉会員。