主張

秋元被告に実刑 これも「他山の石」なのか

判決は「公人としての倫理観が欠如しており最低限の順法精神もない」と被告を強く非難し、実刑判決を言い渡した。

被告は現職の国会議員であり、次期衆院選にも立候補の意欲を公言している。なんとも面妖な話ではないか。

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件で、収賄と組織犯罪処罰法違反(証人等買収)の罪に問われた衆院議員、秋元司被告に対し、東京地裁は懲役4年の実刑判決を言い渡した。

秋元被告側は賄賂の受領を否定し、証人買収に関しても「偽証の依頼はしていない」と無罪を主張していたが、判決は「現金を渡したとする贈賄側の供述は十分信用できる」と指摘し、証人買収については「前代未聞の司法妨害」と断じた。

実刑判決を受けて秋元被告の保釈は取り消されるが、弁護側は改めて保釈を請求し、裁判所はこれを認める決定をした。

証人買収は秋元被告の保釈期間中に行われたものだ。逃亡や証拠隠滅の恐れが高くない場合に限られる保釈の許可には、より慎重な判断が求められたはずだ。

判決によると、秋元被告が自民党に在籍し、IR担当の内閣府副大臣を務めた平成29年から30年にかけて、IR事業参入を目指した中国企業側から計758万円相当の賄賂を受領したとされる。

事件発覚後に秋元被告は自民党を離党したが、政府も党も、知らぬ存ぜぬでは通るまい。

加藤勝信官房長官は7日の会見で「個別事案における裁判所の判断だ。政府としてのコメントは差し控える」と述べた。自民党の世耕弘成参院幹事長は「政治家が守らなければいけない法律が守られていなかったことに尽きる。改めて党内でしっかりとコンプライアンスの徹底を図ることが重要だ」などと述べるにとどめた。

これでは、河井克行元法相が公選法違反罪に問われて議員辞職した際に二階俊博幹事長が述べて批判された「他山の石」発言と何も変わらないではないか。

議員辞職は本人の決断によることが筋だが、その判断が望めないなら、影響力を行使できる立場の人が強く勧告すべきである。

そうした姿が国民に見えない限り、「政治とカネ」の問題に鈍感な政党との印象を払拭できず、衆院選への影響も避けられまい。

会員限定記事会員サービス詳細