新型コロナウイルス禍の中、開催された東京五輪・パラリンピック。世界中から注目されるビッグイベントの無観客開催という異例の事態に社運をかけていたスポンサー企業は絶好のアピールの機会を失った。中でも国内最上位スポンサーのゴールドパートナーを務めるNTTは数年かけて開発してきた技術をアピールできず、関係者からは「こんなはずじゃなかった」とのため息が漏れる。
オリンピックの花形、マラソン競技を2日前に控えた8月5日、NTTは札幌市のマラソン選手に、大会関係者が東京から遠隔で声援を送る実証実験を予定しており、翌6日の決算会見で澤田純社長が発表する準備を進めていた。そこに大会組織委員会から「待った」がかかった。
実験で試すのは、従来の中継技術では数秒発生する遅延をほぼゼロに短縮し、遠隔地からの応援を選手に届けるという無観客開催ならではの技術。コース沿道と東京の特設会場に幅約50メートルの巨大なスクリーンを設置する力の入れようだった。