心温まる「ことば」を新装 伊予鉄道の路面電車 - 産経ニュース

メインコンテンツ

心温まる「ことば」を新装 伊予鉄道の路面電車

「『ふるさと』をようけ詰めて送るけん」と書かれた路面電車
「『ふるさと』をようけ詰めて送るけん」と書かれた路面電車

「『ふるさと』をようけ詰めて送るけん」「家族って毛糸みたい こんがらがって あったかい」-。

松山市街地を走る伊予鉄道の路面電車に書かれている心温まる言葉が8月、10車両のうち2車両でリニューアルされた。松山市などが昨年度、10年ぶりに実施した「だから、ことば大募集」の入選作で、新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)する困難な時代だからこそ、言葉の大切さを伝えたいとの願いが込められ、毎日走っている。

松山市は正岡子規をはじめ多くの文人を輩出し、夏目漱石の小説「坊っちゃん」の舞台となったことで知られる。こうした文学の土壌を大切にしてゆくため「坂の上の雲まちづくり部 文化・ことば課」を設けている。

言葉を時代を超えて人々に感動を与え、人と人とをつなぐための大切な道具ととらえ、「ことば文化」を融合、活用することでまちづくりを進める狙いを込め実行委員会を組織。平成12年に初めて「だから、ことば大募集」を実施した。

入選作は「街はことばのミュージアム」として、路面電車や商店街の街路灯、松山空港の階段などに記して紹介しているほか、構想に賛同する企業や団体も「ことば」を使用することができるようにしている。市民は通勤や通学、買い物の途中、自然とすてきな言葉に巡り合う仕組みだ。

10年ごとに募集を行っており、今回は3回目。テーマは「想(おも)い」。過去最多の2万2440点の応募があり、100点が入選した。大賞は「『ふるさと』をようけ詰めて送るけん」。優秀賞は次の4点。

「終わった恋に寄り添ってくれたのは千年前のことばだった。」

「鈍行で行け、周りが良く見える」

「1年生の娘の置手紙『今日は朝たべない、コイをしているから。』」

「ばあばにだって、将来の夢あるぞ!」

伊予鉄道松山市駅、JR松山駅と道後温泉駅を結ぶ路面電車のうち、言葉が書かれているのは10両。各車両の両側に1つずつで、計20作品が市街地を行き交っている。今回はこのうち2両の計4作品が大賞受賞作品などにリニューアルされた。

松山市では「ことば」を乗せた路面電車が行きかう
松山市では「ことば」を乗せた路面電車が行きかう

市が以前から力を入れている取り組みには、昭和43年に始まった「俳都松山俳句ポスト」がある。現在は市内90カ所、愛媛県外に14カ所、海外にも6カ所の計110カ所に設置してあり、月1回ペースで兼題を設定、同市在住の俳人、夏井いつきさんが選句している。

市民も観光客も誰でも投句でき、平成30年度が9547句、令和元年度が1万1087句だった。令和2年度はコロナ禍で観光客が激減したことから5457句にとどまった。

一方、ウェブ版もあり、こちらの投句数は平成30年度に16万6324句、令和元年度18万5117句、同2年度20万5924句と着実に増えている。

さらに松山市で全国大会が開かれる「俳句甲子園」(全国高校俳句選手権大会)もある。2年度はコロナ禍で投句審査のみとなり、第24回となった今年度は8月22日に全国大会進出のベスト4が市内の会場に集まる形で開催。高校生たちが互いに句を出し合って出来栄えとディベート力を競い合った。優勝は開成(東京)Bチームで、同校としては大会連覇とともに12回目の優勝を果たした。

松山市勝山通りの交差点にある建物には年中、この大会の優秀句が紹介される電光掲示板がある。協賛する菓子メーカー「ハタダ」(本社・愛媛県新居浜市)の俳句掲示板で、信号待ちをするドライバーの目にも留まり、松山市が俳句甲子園のまちなのだと分かる。

2階建てビルの屋上に設置されている「ハタダ」の俳句掲示板
2階建てビルの屋上に設置されている「ハタダ」の俳句掲示板

文化・ことば課主幹の冨田真次さんは「『坊っちゃん文学賞』もあります。俳句や文学といった文化があることで市民にうるおいを感じてもらい、市外の人には松山に来ていただき、住みたい町と思ってもらいたい。交流人口を増やしたい」と話している。

同文学賞は第1回が平成元年。第4回大賞の敷村良子さんの『がんばっていきまっしょい』は映画化され、その後、テレビドラマ化もされて話題を呼んだ。第15回からショートショートが始まり、令和元年からショートショートのみの文学賞に衣替えした。

日経BP社が8月に発表した「シティブランド・ランキング-住みよい街2021-」によると、松山市は2年連続で中国・四国エリア1位となっている。市は「安心・安全」「快適な暮らし」「生活の利便性」など8分野で居住者などから高く評価されたという。(村上栄一)