遅れる追加経済対策 家計支援策が総裁選の焦点に - 産経ニュース

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遅れる追加経済対策 家計支援策が総裁選の焦点に

東京・永田町の自民党本部
東京・永田町の自民党本部

新型コロナウイルスの変異株拡大で個人消費の低迷が続いている。総務省が7日発表した7月の家計調査は消費支出が2カ月ぶりに前年の水準を上回ったが、景気が大きく落ち込んでいた昨年の反動増が大きく、前月比では3カ月連続でマイナスだった。菅義偉首相の退陣表明で追加経済対策の編成は出遅れが避けられず、次期政権を決める自民党総裁選は効果的な家計支援策が焦点になりそうだ。

「第5波」で低迷

7月の家計調査(2人以上世帯)は、1世帯当たりの消費支出が26万7710円となり、物価変動を除く実質で前年同月比0・7%増えた。昨年7月に新型コロナの感染「第2波」で消費が低迷した反動増で増加幅が上振れした。

項目別では、総菜や弁当などの中食を含む「食料」が1・9%増で、東京五輪を自宅でテレビ観戦する世帯の需要が伸びた。和服やシャツなどの「被服および履物」は2・7%増、自動車や携帯電話の「交通・通信」は14・2%増だった。

とはいえ、緊急事態宣言の延長・拡大の影響で前月比(季節調整済み)では実質0・9%減と弱含んでいる。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストによると、個人消費は7月上旬に感染第4波の収束で一度は上向いたが、中旬以降は第5波の急拡大で再び低迷。「旅行や通院、習い事などを控える動きが生じたほか、在宅勤務の推進も重なりスーツなどの消費が落ち込んだ」と説明する。

コロナ前回復遠く

厚生労働省が7日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の企業)では、基本給や残業代などを合計した現金給与総額(名目賃金)が前年同月比1・0%増の37万2757円となり、5カ月連続で前年水準を上回った。

残業代が回復し、雇用・賃金の悪化には歯止めがかかっている。ただ、こちらも昨年の反動増の側面が大きく、コロナ禍前の水準には回復していない。名目賃金は一般労働者(49万3723円)が1・5%増加したが、コロナ禍のひずみがより強く出ているパートタイム労働者(10万2869円)は1・1%減だった。

感染力が強い変異株の拡大で、12日が期限の緊急事態宣言は再び延長される公算が大きい。今年後半に期待された爆発的な消費回復「リベンジ消費」や、国内総生産(GDP)のコロナ前水準回復も、来年までお預けになる可能性が高い。

退陣表明で棚上げ

低迷する消費の下支えで期待された追加経済対策の編成も、感染拡大や政局の影響で後ずれしている。首相は2日の成長戦略会議で今秋に向けた成長戦略の具体化を指示し、令和3年度補正予算案の編成を見据えた経済対策の立案作業が始まったかにみえた。だが、翌3日の突然の退陣表明で事実上宙に浮き、策定は次期政権に委ねられた形だ。

ワクチン接種が進む米欧で景気が急回復し、物価も上昇する中、日本は7月まで消費者物価指数が12カ月連続でマイナスに沈み、物価が持続的に下落するデフレがまた近づいてきた。ワクチン接種の遅れを取り戻しつつある日本で経済正常化が進まないのは、人の流れが増えるたび感染増加で医療が逼迫する悪循環を断てないことが背景にある。

自民党総裁選は日本経済の再浮揚に向けた方策を議論する絶好の機会。ただ、十分な病床や医療スタッフを確保できぬまま経済対策を講じても、観光需要回復の切り札だった「Go To トラベル」を発足直後に封印させられた菅政権の二の舞いになる。家計支援と医療体制の抜本的拡充をセットで進められるかが次期政権の課題になりそうだ。(田辺裕晶)