【くじら日記】白いハナゴンドウ 人気者に - 産経ニュース

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くじら日記

白いハナゴンドウ 人気者に

白いハナゴンドウの「ハマタ」(手前)と「ユウジ」=和歌山県太地町立くじらの博物館(平成27年撮影)
白いハナゴンドウの「ハマタ」(手前)と「ユウジ」=和歌山県太地町立くじらの博物館(平成27年撮影)

くじらの博物館の看板イベント「餌あげ体験」では、お客さまが5匹のシシャモが入った小さなバケツを手にし、自然プールで暮らすクジラたちに自由に餌をあげることができます。スタッフは、感染症予防対策としてお客さま同士の間隔が保たれるように気を配るのですが、気付くと、あるクジラ1頭のところに、自然と人が集まってきます。そのクジラの体の色が、他と全く違うからです。

鯨類の体色のほとんどは黒や灰色を基調とし、魚と似て、背が暗色で腹が明色です。これらは、背景に溶け込み、自分自身が他から身を隠すのに役立ちます。当館で飼育する9種の小型鯨類も、濃淡は異なりますが、大体同じ体色をしています。さて、その中で、特異な体色をしているのが、全身白色のハナゴンドウです。

野生下では、20種以上の鯨類で、白い体色をした個体が観察されていますが、白いハナゴンドウについては、今まで学術論文での報告はありませんでした。

2014(平成26)年11月、くしくも2頭の白いハナゴンドウが太地町沖で立て続けに発見され、くじらの博物館で飼育されることになったのです。2頭はオスで、太地町の沿岸にも分布し町の花でもある白い花「ハマユウ」と、町名の「タイジ」から文字をとり、それぞれ「ハマタ」、「ユウジ」と名付けられました。

飼育したことで、観察や調査が可能となり、外部形態の特徴がわかってきました。「ハマタ」は、喉元に若干色素がありますが、ほぼ全身白色。「ユウジ」は、頭部に部分的に色素がみられますが、ほとんどが白色です。2頭とも、白い体色に部分的な色素沈着があること、そして目が黒いことから、先天的にメラニン色素が欠乏している「アルビノ」ではなく、メラニン色素をもつが体色を白くする遺伝情報を持つ「白変種(白化個体)」の可能性が考えられました。

このような異常白色個体は、捕食者から狙われやすかったり、餌となる生物に逃げられやすかったりするなど、自然界での生存率は低いといわれています。

自然界ではハンディキャップとされる白い体色ですが、餌あげ体験では一転、その珍しく美しい風貌から注目の的に。「ユウジ」は現在、くじらの博物館から離れ、太地町内の森浦湾で飼育されていますが、「ハマタ」はお客さまが与える魚で丸々と太っています。その体は夏日に照らされてまぶしく光り、神々しくもあります。(太地町立くじらの博物館副館長 稲森大樹)