クジラと人間が織りなす物語 写真家・石川梵監督の映画「くじらびと」 - 産経ニュース

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クジラと人間が織りなす物語 写真家・石川梵監督の映画「くじらびと」

銛を手にクジラに挑むラマファ(石川梵撮影)
銛を手にクジラに挑むラマファ(石川梵撮影)

写真家、石川梵(いしかわ・ぼん)さん監督のドキュメンタリー映画「くじらびと」が3日から全国公開されている。

インドネシアのラマレラという村のクジラ漁と、それを中心にした村人たちの生活を2017~19年に幾度も足を運んで撮影。漁師たちと一緒に小さな漁船に乗りこみ、人とクジラの息詰まる攻防を至近距離から捉えた。

船はクジラと激しく何度もぶつかり、大きく揺れる。現地語で「ラマファ」と呼ばれる銛(もり)打ちたちが、銛を手に船からクジラに飛びかかる。「映画館の大型スクリーンで、とくに前方で見ると、船に乗っているような臨場感がある」と石川さんは自信を持っていう。

ドローンを駆使して巨視的な撮影をしたという石川梵さん(坂本慎平撮影)
ドローンを駆使して巨視的な撮影をしたという石川梵さん(坂本慎平撮影)

陸に上げられたクジラは解体され、肉など食べられる部分と、油など生活素材に分けられ、使われない部位はほとんどない。村全体で年間10頭ほどのクジラが獲れれば、村人たちは生活していくことができる。石川さんは「食べることは、命をいただくことであるという思いが、自然や見えない存在への感謝や畏れにつながる。日本ではそれが見えにくくなっている」と言う。

村では何百年もそのような暮らしを続けてきた。映画では、エーメンという少年の一家をはじめ幾つかの家族が出てくる。その中には漁で命を落とすベンジャミンという若者がいる。その悲しみを村全体で受けとめ、彼の父で船大工のイグナシウスらが新たな船を建造する。「先祖を敬い、再生を繰り返すことが持続可能な世界につながる。エーメンに未来、イグナシウスに伝統を感じた」と石川さんは振りかえる。

石川さんは今回の映画撮影以前にも、1991年からこの村を何度も訪れ、97年には「海人」という大判の写真集も出している。今作では、「あの当時はなかったドローンを用いることで、鳥の目、魚の目、人間の目を使い、巨視的に人間の物語、クジラの物語を描いた」と語った。(坂本慎平)

映画「くじらびと」は、新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3-15-15)などで公開中。