魅せる観光地の作り方

「誇れる街づくりを」 福岡・八女商議所の挑戦

悔しさを原動力に

福島地区にはビジネスホテルと旅館が4軒しかなく、古民家ホテルも高価格な設定も前例のない事業だった。「八女でそんな高額の宿泊施設に泊まる人がいるはずない」。山口氏らの耳にはそんな陰口も入った。

「必ず結果を出す」。関係者は奮起した。八女は地域資源はあっても長時間滞在してもらえず、悔しい思いをしてきた。観光客はうなぎと川下りで有名な近隣の柳川市に取られ、八女に来ても、宿泊は福岡市や久留米市に流れた。

検討を進める中、古民家ホテルの改装に使える経済産業省の補助金の存在を知り、関係者は実現に向け動きを加速した。山口氏をはじめ商議所会員や地元事業者ら有志が出資し、観光事業を手掛ける企業「八女タウンマネジメント」を設立。行政に頼らず、地元経営者らが実行する仕組みを整え、少人数のコンセンサスで意思決定を迅速化した。

総事業費3億円のうち、国の補助金1億8千万円の活用と、地元銀行などからの借り入れを決め、資金調達にめどをつけた。ホテルの設計や運営は、歴史的建造物の再生に実績を持つバリューマネジメント(大阪市)に依頼した。

勢いでスタートしたが、いくつもの壁にぶつかった。改修する古民家の室内は荷物が山積みで、野良猫が出入りするほどの状態。所有者との交渉も難航した。同商議所の萩尾猛専務理事(65)は「問題があれば解決のために即動き、走りながら一つずつクリアしていった。地元が本気になることで、運営会社も付いてきてくれた」と振り返る。

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