【TOKYOまち・ひと物語】草刈りで城復活 築城500年の八王子・滝山城 - 産経ニュース

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TOKYOまち・ひと物語

草刈りで城復活 築城500年の八王子・滝山城

手作りの北条勢の甲冑を着込み、城跡散策の雰囲気を盛り上げる「滝山城跡群・自然と歴史を守る会」のメンバー=八王子市
手作りの北条勢の甲冑を着込み、城跡散策の雰囲気を盛り上げる「滝山城跡群・自然と歴史を守る会」のメンバー=八王子市

今年で築城500年を迎えた八王子市の滝山城。「続日本100名城」にも選ばれた景勝地だが、かつてはあちこちに草木が生い茂り、史跡としての知名度はいま一つだった。郷土の誇りをよみがえらせたいと、15年以上遺構の保存活動に取り組んできたのが、「滝山城跡群・自然と歴史を守る会」理事長の尾熊治郎さん(77)だ。草刈りやガイドボランティアを通じて、今も城の認知度向上に力を注いでいる。(竹之内秀介)

滝山城の築城は戦国時代とされる。関東一円を支配した北条氏康の3男、氏照が城を全面的に改修し、20年以上居城とした。永禄12(1569)年に甲斐の武田信玄が北条領内に侵攻すると、2万の手勢が城に押し寄せたが、最後まで耐え抜いたという。

タイムカプセル

今月1日の午後1時半、小雨が降る中、城の麓にある駐車場で尾熊さんや甲冑を着込んだボランティアの面々と落ち合い、城跡を案内してもらった。

「一般的に丘陵は宅地開発されがちだが、滝山城跡は、ほぼ手が加えられていない。タイムカプセルのように戦国時代の遺構がよく残っている」

急斜面を軽々と登りながら、尾熊さんは城の魅力をこう語る。

山を削り、盛り固めて造られた滝山城に石垣や天守閣はなく、一見平和なハイキングコースだ。しかし注意深く歩くと、自然の地形をいかした堅牢(けんろう)な守りの遺構が浮かび上がってくる。

例えば両脇が深い堀に囲まれた通り道は「土橋」という防御設備。大人1人が歩ける幅しかなく、どんな大軍が押し寄せても守備側は1人ずつ討ち取れる。城の入り口に当たる虎口や土塁も形がよく残っており、尾熊さんは「ここまで保存状態が良い山城は全国屈指。城郭ファンに『土の城の最高傑作』と呼ばれるゆえんです」と胸を張る。

「滝山城跡群・自然と歴史を守る会」では、遺構を保存するため毎月1回、草刈りや枝打ちをしたり、散策ルートのガイドボランティアを請け負ったりしている。会員数は約70人だ。

当初は不審の目も

尾熊さんは昭和46年に仕事の都合で八王子市に移住し、地元の歴史を学ぶうちに、滝山城に興味を持つようになった。当時は史跡としての整備が進んでおらず、遺構は草木に覆われており、たまに観光客が訪れても「どこに城があるのか」と怒って帰ってしまうこともあった。

「せっかくの名城を埋もれたままにするのはもったいない」

そう考え、平成16年から有志とともに草刈りを始めた。当初は一部の住民から「山で何をやっているんだ」と不審に見られることもあったが、遺構が徐々に見えるようになるにつれ、「こんな立派な城だとは知らなかった。ありがとう」と感謝の言葉が寄せられるようになったという。

尾熊さんが「特にうれしかった」と振り返るのが、平成29年に日本城郭協会が選定する「続日本100名城」に選ばれたことだ。城の歴史的経緯に加え、遺構の保存状態の良好さも評価のポイントだった。

行政も動き出した。都は城跡の用地取得を進めており、年内に保存や活用に関する検討会を立ち上げる予定という。

「地元の人たちが力を合わせ、ようやくここまで来た」と尾熊さん。「築城500年を機に、八王子に戦国時代の空気感を存分に味わえる史跡があることを多くの人に知ってもらえれば」と期待を込めた。