堀内恭彦の一筆両断

暴力団トップへの極刑判決 今こそ総合的な対策を


加えて、暴力団による被害者の民事的な救済も重要課題である。暴力団が一般市民を殺傷したり、恐喝したりすれば刑事事件として処罰されるが、被害者の生命・身体、財産上の損害など民事上の被害はほとんど回復されない。暴力団の言葉を使えば、刑事的な「落とし前」はついたかもしれないが、民事的な「落とし前」はついていない。これを放置してはいけないということで、われわれ弁護士は民事介入暴力対策として被害者救済に取り組んでいる。

しかし、やはり一般市民が暴力団相手に訴訟を起こすのには大変な勇気がいる。怖いし、精神的重圧も大きく、泣き寝入りしている被害者は少なくない。

ここでも新しい法律を作る必要がある。例えば、被害者に代わって国や自治体が訴訟を起こせるようにするなど、公的機関が前面に出て対応する法律である。

他方で、暴力団から離脱したいという者の支援や社会復帰の援助にも積極的に取り組まなくてはならない。わが福岡県では離脱した元組員を雇用した企業に給付金を出すなどしており、この制度が全国に広がることを期待したい。

また、ドラマの世界のヤクザを見て憧れる青少年に「現実は格好いいものではない」と教えるのも大人の役割であり、教育・啓蒙(けいもう)活動もさらに推進していきたい。

このように今後の暴力団対策には総合的な対策が必要であり、新たな立法が不可欠である。国民の生命・身体・財産を守るのは政治家の仕事であり、国会議員の皆さんには是非真剣に取り組んでいただきたい。私たち国民も声をもっと大きくして国会に伝え、立法化につなげていかなければならない。

【堀内恭彦(ほりうち・やすひこ)】 昭和40年、福岡市生まれ。福岡県立修猷館高校、九州大学法学部卒。弁護士法人堀内恭彦法律事務所代表。企業法務を中心に民事介入暴力対策、不当要求対策、企業防衛に詳しい。九州弁護士会連合会民事介入暴力対策委員会委員長などを歴任。九州ラグビーフットボール協会理事(スポーツ・インテグリティ担当)、元九州大学ラグビー部監督。