【コロナ直言(13)】酒提供 明確なゴール示して 旭酒造社長・桜井一宏氏 - 産経ニュース

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コロナ直言(13)

酒提供 明確なゴール示して 旭酒造社長・桜井一宏氏

《1年以上続く新型コロナウイルス禍で、緊急事態宣言や蔓延(まんえん)防止等重点措置の発令などに伴う飲食店への営業時間の短縮・休業要請が、常態化している。飲食業界は先行きの見えない状況が続き、帝国データバンクによると、コロナの影響で倒産した飲食店は全業種中最多の325件(8月27日現在)に上る。そんな中、日本酒「獺祭(だっさい)」で知られる旭酒造は5月、日本経済新聞に全面意見広告を出した》

意見広告では、「度重なる営業時間制限や酒類提供の中止などにより、全国の飲食店は疲弊し、破滅の淵(ふち)に立たされています」と訴えた。

批判覚悟だったが、理解を示す反応が約9割を占めた。飲食業界だけでなく、コロナに苦しむ他業界からの温かい言葉もあった。非常に勇気づけられた。

当然、感染対策が喫緊の課題で、医療従事者の負担も大きいことは理解している。ただ、飲食店の中には通常より売り上げが9割減という店も珍しくない。飲食店は日本の食文化を懸命に支えてきた。飲食業界を守ることは、命を守ることにつながると考える。

感染対策なしに、飲食店で酒類を提供させてほしいわけではない。ただ、感染者が増えると、そのたびに一律で酒類提供の自粛や休業の要請が出される。1年前から対応は何も変わっていない。

例えば、1人で訪れる客も多い牛丼チェーンのような店であっても、酒類は提供できない。感染対策と経済の両輪を回すと口では言うが、あまりにも乱暴なやり方ではないか。

《政府は今年4月、コロナ対策の基本的対処方針を改定。感染対策を徹底する飲食店には酒類の提供を認める「第三者認証制度」の促進を各自治体に求めた。だが「第5波」の到来で大阪などでは、認証の有無にかかわらず酒類の提供はできなくなった》

認証のために努力した飲食店もあるはずだ。行政の方針がこうも変遷すると、店側が疑心暗鬼になるのは無理もない。方針を修正するなら、そのたびに丁寧な説明を尽くすべきだ。その上で、国や自治体には明確なゴール、出口を示してほしい。

《こうした中、ワクチン接種進展を前提に、緊急事態宣言の発令地域でも十分な感染対策を取っていれば飲食店の酒類提供を認めるとする政府の行動制限緩和案が明らかになった》

正直、遅すぎるという印象もあるが、私自身も訴えていた緩和案が示されたのはよかった。今は(決断が)遅いと批判するより、前を向きたい。

案をもとに明確な出口が示されれば飲食店にとっては希望だ。「ある地域でワクチン接種率が一定の数値を超えたら、酒類提供を認める」など、今後より具体的な数字が示されれば、ワクチン接種が今より進む可能性もある。

感染者は増えていても、ワクチンによって重症化や死亡のリスクは減っている。そういた点や医療現場の状況もしっかり分析し、政府はその結果を国民にも分かりやすく、丁寧に説明してほしい。(聞き手 桑波田仰太)


旭酒造社長の桜井一宏氏
旭酒造社長の桜井一宏氏

さくらい・かずひろ 旭酒造社長。早稲田大社会科学部を卒業後、メーカー勤務を経て平成18年に旭酒造に入社。28年、父の後を継いで社長に就任した。同社が手がける日本酒「獺祭」は大人気で、海外でも評価が高い。26年には、当時の安倍晋三首相が、来日したオバマ大統領に贈った酒として話題になった。