女子マラソン・道下美里 「最高で最強の仲間」支えを背に大願 - 産経ニュース

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女子マラソン・道下美里 「最高で最強の仲間」支えを背に大願

【東京パラリンピック2020】<陸上女子マラソン 視覚障害T12>メダルセレモニー 金メダルを獲得した道下美里=国立競技場(桐原正道撮影)
【東京パラリンピック2020】<陸上女子マラソン 視覚障害T12>メダルセレモニー 金メダルを獲得した道下美里=国立競技場(桐原正道撮影)

ゴールテープの感触を身体に感じた瞬間、飛びきりの笑顔がはじけた。5日の女子マラソン(視覚障害T12)で、道下(みちした)美里(44)が初の金メダルを獲得。「忘れ物を取りに行く」と、2位だった前回リオデジャネイロ大会の雪辱を誓ったレースで、仲間とともに悲願を達成した。

膠様(こうよう)滴状角膜ジストロフィーという難病を発症し、中学2年で右目を失明。20代半ばには左目の視力もほとんど失った。失意に暮れる中、26歳で入学した盲学校の体育の授業で、「音源走」という、音のする方向に向かって走る短距離走を初めて体験した。最初はダイエット目的だった陸上。しかし、学校に赴任してきた体育教師の安田祐司さんの指導で、本格的に取り組むようになった。

「内気だったし、少しぽっちゃりしていた。今の彼女とは真逆のイメージでしたね」。安田さんは出会いをそう振り返る。

結婚後、転居した福岡県で、視覚障害者のランニングクラブに飛び込んだ。自身のスピードに対応できる伴走者を探すのが難しい時期もあったが、実績を積む中で、人の輪が広がった。

クラブの当時の会長だった松延太郎さん(71)によると、視覚障害者と伴走者をあわせて10人ほどだったメンバーは現在、180人近くに増えた。松延さんは「彼女が明るく前向きに頑張る姿を見て、少しずつ仲間が増えた」と振り返る。

今大会、5年前の銀メダル獲得に貢献した青山由佳さんが前半の伴走を担当し、東海大時代に箱根駅伝に3度出場した元実業団選手の志田淳さんが後半をつないだ。30キロ付近、志田さんの判断でスパート。並走していたロシア・パラリンピック委員会(RPC)の選手は1500メートルにも出場しており、スタミナは続かないと判断し、勝負をかけた。

ゴール直前には、勝利を祝福するかのように、雲間から陽光が差した。テープを切り、志田さんと抱き合って喜んだ。「最高の伴走者と最強の仲間がいたから、たどり着いた。本当に夢みたい」。小柄なゴールドメダリストの目尻から、涙がこぼれた。

(本江希望)

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