【朝晴れエッセー】一緒に・9月5日 - 産経ニュース

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朝晴れエッセー

一緒に・9月5日

「一緒に迎えようよ」。夫が言う。

私は約20年間介護職に従事していた。2年前に突然、胃が痛みだし救急病院へ。3日間意識がなく、目覚めたときには右半身が動かない。言葉を発することができない。病名は脳出血。

その直後から始まったリハビリ。先生方のご尽力のおかげで右足の装具が外れ、言葉が少しずつ発せられるようになる頃には、目標ができた。

「介護職に復帰したい。このまま終わるんはイヤや!」

病に倒れるまでは、この調子なら70歳まで、75歳も夢じゃないかも…と思っていた。

徐々に機能が回復するにつれ、「現役復帰は無理なんとちがうやろか…」「弱気になってどうするん。最後まで諦めたらアカン!」。その繰り返し。葛藤。

そんな中、ふっと漏らした私の言葉に、夫は「これまで一生懸命仕事をしてくれて、忙しかったやろ。働き過ぎたんや」

「…」

「僕はもうすぐ定年を迎えるから、42年間お弁当作りご苦労さまということで、一緒に定年退職を迎えようよ」

今もリハビリは続いている。現在の目標は「自転車に乗る」こと。

それから先のことは、体と相談しながら探していこうと思っている。

梅原茂子(64) 和歌山市