Netflixで「韓国発」がアジアを牽引する理由と、その先のエンタメ業界に起きること

「ウェブトゥーンは際どい表現が求められる題材が多く、それが要因でこれまで実写化に至らない作品も多かった。しかし、Netflixでは自由な表現を大切にしているので、それが実現できています。だからこそ、化学反応を起こせたと思っています」

ウェブトゥーンは韓国において、「ストーリー産業」と呼ばれる映画・ドラマ業界の底上げを目指すために、戦略的に国策として推進されてきた。国を挙げて新たな知財財産の創出に力を入れるべく、原作開発に資金が投入されてきたのだ。

カカオジャパンが運営する「ピッコマ」が日本のマンガアプリで最も利用されているように、ウェブトゥーンは日本でも定着しつつある。そして、人気は欧州にまで広がっている。

フランスの『Le Parisien』は今年2月、「ウェブ漫画が地下鉄を征服した」というタイトルの記事を掲載し、フランスで韓国発のウェブトゥーンが浸透している状況を伝えた。また、フランスを代表するウェブトゥーンプラットフォーム「Delitoon(デリトゥーン)」は、2020年の年間売り上げが100億ウォン(約9億6,000万円)を突破したと発表している。

「ペーパー・ハウス」の韓国リメイクで追撃

さらに、Netflixを通じた韓国の知財財産の活用の動きは絶え間なく続く。海外のヒット作から“韓国版”をつくることで、韓国コンテンツのファンを広げていく試みも始まったのだ。その一例が、Netflixスペインオリジナルを代表するヒット作で、20年に世界配信されたシーズン4が92カ国でトップ10入りする記録を打ち立てた「ペーパー・ハウス」の韓国版の製作である。

ネットフリックスのバイスプレジデントのキムは、「ペーパー・ハウス」をリメイクする狙いについて「Netflixに実装されたアルゴリズムに頼るばかりが目的ではない」と語る。オリジナルの「ペーパー・ハウス」を視聴した履歴がある会員には恐らく韓国版が「オススメ」作品として表示される可能性は高いが、オリジナルを知らない韓国ドラマファンに「ペーパー・ハウス」の韓国版を通してオリジナルを知るきっかけをもたらす。そこに価値が生まれると考えているのだ。その逆もしかりで、韓国ではこうした相互作用を生み出すプロジェクトをいくつか検討しているという。


韓国版「ペーパー・ハウス」は、ソウル近郊に位置する京畿道の坡州市と漣川郡に新たに建設された巨大なプロダクション施設で撮影されている。これに対して日本も、実写作品を強化しべくハードの整備で対抗し始めている。

ネットフリックスの日本法人は21年3月に東宝スタジオと提携し、スタジオ施設を拡充し始めたところだ。このスタジオは、今後配信予定の「幽遊⽩書」や「サンクチュアリ」の撮影で活用することになる。また、CG合成でつくられたセットが話題になった「今際の国のアリス」で技術協力したデジタル・フロンティアとも同年3月に契約し、VFX技術を駆使した作品づくりを強化していく。

ハード面においては、ネットフリックスにおいて日本と韓国の差は現段階ではそこまで大きくはない。だが、産業全体のエコシステムに及ぼす影響を考えると、その差が広がればエンタテインメント全体のリーディングポジションを韓国に明け渡すことにもつながりかねない。