Netflixで「韓国発」がアジアを牽引する理由と、その先のエンタメ業界に起きること

「点と点」が結ばれる韓国の強み

サランドスは、いまのNetflix韓国オリジナル作品に世界的に影響を及ぼす勢いがあることも示唆している。「韓国作品がグローバルエンターテインメントのトレンドとして定着していることを実感しています」とサランドスは語っており、韓国そのもののブランドに価値を置いていることが新作のバリエーションの広がりからうかがえる。ドラマに限らず、映画やリアリティショー、シットコムといった様々なジャンルを網羅した韓国作品の世界配信を控える。

また、日本オリジナルと韓国オリジナルには俳優やクリエイターの起用戦略にも違いがある。韓国オリジナルはNetflixの作品で注目された人物を積極的に起用するケースが多い。違いと言えば、韓国のNetflixでは自らが輩出したクリエイターから出演した俳優までを積極的に起用している作品が目立つ点にある。

21年5月14日に世界配信された韓国のオリジナルシリーズ「ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です」はその具体例のひとつだ。アスペルガー症候群の青年グルと刑務所から出たばかりのグルの叔父サングが故人の持ち物を処分する「トラウマ片付け屋」を営む物語から、人生、死、家族の複雑な感情や思いを丁寧に描いていく。グル役は「愛の不時着」で北朝鮮の軍人部隊のひとりを演じたタン・ジュンサンが抜擢された。

また「人間レッスン」で社会問題を背景にした重い犯罪ものをテンポよくまとめ上げた監督キム・ジンミンの最新作「アンダーカバー」も年内配信を予定する。ギャングの一員の娘・ジウが父親の死の真相を求めて警察組織でスパイとなって復讐に燃えるというストーリーが描かれ、これもまたキム・ジンミンの手腕が光る一作になるのではないか。

こうした好循環を生み出せる背景には、役者の育成からプロダクションまで一体化した韓国の製作エコシステムと強固な業界のネットワークがある。すなわち、点と点が線でつながっていることが韓国の強みであり、日本では築かれていない弱みでもあるのだ。

ウェブトゥーン×Netflixの化学反応

韓国オリジナルの新作ラインナップの目玉のひとつに、「キングダム」のスペシャルエピソードとなる「キングダム: アシンの物語」が挙げられる。この作品の脚本を担当したキム・ウニは「See What’s Next Korea 2021」に登壇した際に、「『キングダム』は韓国オリジナルを世に知らしめたコンテンツだと思います。なぜなら、英語を話さないドラマでも良質なストーリーであれば、グローバルの視聴者を結びつけることができると証明したからです」と語っていた。

つまり、英語を話さないドラマでも良質なストーリーであれば成功する、ということなのだ。日本の作品にも十分に可能性が広がっているとも言っていいだろう。

だが、成功するには打率を上げる必要があり、それには「数を打っていく」必要もある。この点においても、韓国と比較すると日本の課題が浮き彫りになる。韓国の場合、映像化できる新たな原作として「ウェブトゥーン」の存在があることが大きい。

韓国オリジナルからは、日本をはじめアジアで人気となったビジネス復讐劇「梨泰院クラス」や、世界で2,200万を超える世帯が視聴したホラー「Sweet Home -俺と世界の絶望-」のように韓国発のデジタルコミック「ウェブトゥーン」を原作とした新作も続く。年内に配信予定の新シリーズ「Hellbound」(英題)もそうだ。


「Hellbound」は地獄行きを通告された人々によって混沌とした社会が舞台で、「Hell=地獄」というタイトルのウェブトゥーンを原作に描かれた破滅的な世界観が映像化される。20年に90か国でトップ10入りしたNetflix韓国オリジナル映画「#生きている」の主演ユ・アインが、本作では新真理会という教会を率いるチョン・ジンス役に挑む。

監督はヒットした韓国のゾンビ映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』の監督ヨン・サンホが手がけ、監督と大学時代からの親友で人気イラストレーターのチェ・ギュソクも製作協力する。韓国のクリエイティビティを集積させた作品だ。

ネットフリックスのコンテンツ部門バイスプレジデント(韓国、東南アジア、オセアニア圏)のキム・ミニョンはイベント当日の合同取材で、ウェブトゥーンを原作とした作品がなぜNetflixにうまくマッチしているのか、その理由を次のように語っている。