【書評】『捨てられる男たち』奥田祥子著(SB新書・990円)無自覚で社会的評価下げ - 産経ニュース

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書評

『捨てられる男たち』奥田祥子著(SB新書・990円)無自覚で社会的評価下げ

女性活躍推進法の施行や、SNS発信で世界的に盛り上がった「#MeToo」運動、そして国連の持続可能な開発目標「SDGs」には、ジェンダー平等の実現が掲げられている。男女平等を求める一連の流れから、今日の日本社会においてジェンダーをめぐる問題は、誰もが直視せざるを得なくなった。

しかし、そうした認識を欠いた人が、とりわけ中高年の男性に少なくないのも事実であり、森喜朗氏や河村たかし氏といった著名な政治家が、「悪意のない」言動によって批判され、社会的な評価を下げている。

故意に嫌がらせをしたわけでもないのに、なぜ彼らはそこまで責められる必要があるのか。理由が分からず、いつか自分にも火の粉が降りかかってくるのではないかと、被害者であるかのような意識を持っているのであれば、ぜひ本書を手にとってほしい。会社でも家庭でも、本書で論じられる「無自覚ハラスメント」の加害者になってしまう可能性があるからだ。

令和を迎えた日本では、出産後も働く女性が増え、それに伴い育児休業の取得を希望する男性も多くなっている。それだけではなく、介護をする人、シングルで子育てする人、そして、未婚の人など働き手の生活は多様化しており、職場が「サラリーマンと専業主婦」の家庭を持つ男性正社員だけで構成されていたのは過去の話である。

それにもかかわらず、著者が問題視する「滅私奉公、上司の指示には絶対服従といった、多様性や分権化が求められる現代社会ではもはや通用しない、男性主導の画一的で権威主義的、排他的な価値観」を基準として仕事をすれば、周囲と軋轢(あつれき)を生むのは当然だといえる。

著者は20年に及ぶ取材経験に基づき、あくまで男性の語る言葉に寄り添いながら議論を展開している。そのため、コミュニケーションに着目して示される解決策はポジティブで具体的だし、明日から実行できそうなものばかりで参考になる。

「男社会」の理屈にこだわる男たちばかりが集まる企業は、社会から見放されてしまうのではないか。本書を通じて、わが身を振り返るだけではなく、勤める職場の将来性について考えてみるのもいいだろう。

評・田中俊之(大正大学准教授)