【新聞に喝!】アフガン報道、朝日の不可解な誤謬 イスラム思想研究者・飯山陽 - 産経ニュース

メインコンテンツ

新聞に喝!

アフガン報道、朝日の不可解な誤謬 イスラム思想研究者・飯山陽

8月26日、カブール国際空港付近で、爆発で負傷し手当てを受ける男性(UPI=共同)
8月26日、カブール国際空港付近で、爆発で負傷し手当てを受ける男性(UPI=共同)

アフガニスタンからの米軍撤退期限である8月31日を目前に控えた26日、首都カブールの空港そばで自爆テロが発生し、米兵やアフガン人を含む180人以上が死亡する大惨事となった。

犯行声明を出したのは「イスラム国」(IS)である。27日、朝日新聞デジタル版は「カブール空港近くの爆発、ISが犯行声明」という記事で、「声明は『米兵や彼らに協力した通訳やスパイどもの集団に、爆弾を仕掛けた車を突入させた』と主張」と報じた。

しかし、アラビア語の声明文には「自爆ベルトを爆発させた」とある。私がその旨をSNSで指摘した翌日、朝日は「声明文を読み誤りました」と修正記事を出した。

報道の役割とは何よりもまず事実を正確に伝えることであろう。朝日は外国語を正確に訳すという基本的なタスクも怠っている。原稿を出しているのはカイロ支局の記者であるにもかかわらず、アラビア語を正確に訳せないのは不可解ですらある。単なる誤謬(ごびゅう)ではなく捏造(ねつぞう)のそしりも免れまい。

アフガンでは6年前から「イスラム国ホラサン州」が活動してきた。「イスラム国」はタリバン同様、イスラム法による世界征服を目標に掲げて米国を敵視するが、タリバンも敵視する。「敵の敵は味方」という単純なロジックは通用しない。

その証拠に当該声明文には次のように書かれていた。「注目すべきは過去数年間にわたり米軍で働いてきた何百人もの外国人従業員、通訳者、スパイらをここ数週間以来、米軍がタリバン兵と協力して退避させてきたことである」

「イスラム国」にとって敵である米軍との協力は、たとえどのような目的があろうと許されない。敵との妥協は厳禁という信念は一般に、イスラム初期の7世紀に第4代カリフ・アリーが反逆者ムアーウィヤと和議を結んだことを非難したハワーリジュ派という分派のイデオロギーに由来するとされる。「イスラム国」にとってタリバンは腰抜けの裏切り者なのだ。

タリバンは外国メディアに対し、アフガンには平和が訪れたと繰り返し主張している。しかし、実際は「イスラム国」をはじめとする過激派が潜伏・活動しており、タリバンに全土の治安を維持する能力があるとは想定できない。

アフガンの試練はこれからだ。声明文すら正確に訳すことのできない朝日に、その複雑で困難な現実を正確に報じることを期待するのは無理というものであろう。

【プロフィル】飯山陽

いいやま・あかり 昭和51年、東京都生まれ。イスラム思想研究者。上智大文学部卒、東大大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。著書に『イスラム教再考』など。