【山本一力の人生相談】お酒大好き70代 酒量を減らして生活を変えたい - 産経ニュース

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山本一力の人生相談

お酒大好き70代 酒量を減らして生活を変えたい

相談

70代、無職の男性。私は大のアルコール好きで、毎日夕方の4時から、ビール大瓶5本、焼酎3合を、延々4時間飲みます。妻は料理が最高に上手で、おいしいおつまみを作り、酒の相手もしてくれます。

ずっとこんな暮らしをしてきましたが、最近、これは家族に迷惑な上、体にもよくないのではと思い始めました。やめられないにせよ、酒量を控える努力をしなければと。

けれど、これがなかなか難しい。長男夫婦と孫2人を加えた家族6人の夕食は6時過ぎから。4時から飲むのはわがままなのかも…誰に言われたわけでもないですが、そう思うようになりました。酒量を減らしたい、家族に合わせて生活も変えたい。気持ちはあるのにそうできない。私が一歩を踏み出すための助言をお願いします。

回答

まず、あっぱれですと称(たた)えたい。

投稿記述を子細に読めば、要検討課題は多々あろう。それを承知で称えるのは、ご当人に解決したいとの意識があるからだ。

やるか止(や)めるかなら、たとえば断煙など、困難でも乗り越えての達成もある。

しかし絶縁ではなく減量するという自己管理は、決断としくじりの繰り返しだ。

わたしは親からの遺伝性糖尿病患者だ。限定量の糖分しかダメと分かっていても、みずから甘味に近寄る。見かねた主治医は、例を挙げての戒めをくださった。

「たとえばサクランボのパック。普通のひとは一度に8粒ほどで満足でしょうが、1パック丸ごと欲しがるのが糖尿病です」

指摘の通りだったが、止められない。

73歳でいまさらながら思い知り、あらためて甘味を遠ざける努力を続けている。

徐々に血糖値は下がりつつあるが、甘味の誘惑を断固適量に止めるというゴールは、いまだ遠い先である。

相談者が記された酒量、下戸のわたしにも相当なる多量と察しがつく。とはいえ拝読するに、素敵(すてき)なカミさん調理の美味(うま)いものを添えた、夫婦での晩酌のようだ。

これぞ一番の大事と確信する。

さりとて毎日午後4時から4時間では、長いやもしれない。

同居息子一家に迷惑かもと、状況をみずから案ずるのも真っ当だ。そこで一案。

惰性で吞(の)んでいるときはないかと、自分に問うてみては。もしそう感じたときに、酒量を減ずるのがスタートだ。

しくじっても、また翌日は気をあらたにし、やるぞと向き合う自分を褒めてやろう。減らした分、酒の美味さが際立つのでは。

わたしには日に一度、薄い甘味を摂(と)る至福の時が。焦がれて待つのもまた、甘露だ。


回答者

山本一力 作家。昭和23年生まれ。平成9年「蒼龍」でオール読物新人賞を受賞しデビュー。14年「あかね空」で直木賞受賞。近著に「湯どうふ牡丹雪 長兵衛天眼帳」(KADOKAWA)、「牛天神 損料屋喜八郎始末控え」(文芸春秋)、「ジョン・マン7 邂逅(かいこう)編」(講談社)、「後家殺し」(小学館)など。

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