【志らくに読ませたい らく兵の浮世日記】志村けんの思い受け継いだ沢田研二(1/2ページ) - 産経ニュース

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志らくに読ませたい らく兵の浮世日記

志村けんの思い受け継いだ沢田研二

立川らく兵
立川らく兵

映画「キネマの神様」を見に行った。山田洋次監督の作品だ。

半月ほど前に一度見に行ったんだけど、その時は満席で入れなかった。なにぶん予約をせずにフラッと行ったのがいけなかった。それに席が埋まっていたのは、人気の作品ということもあり、また緊急事態宣言中で上映回数が制限されていたのもあるだろう。いまは映画館も大変だなと、やっと座れた客席でいろいろ感じるものがあった。

「キネマの神様」はもともと志村けんを主演に撮られる予定だった映画だ。それが去年、新型コロナウイルスによる肺炎のため、その日本一のコメディアンは亡くなってしまった。そして感染拡大の影響もあり撮影は一時中断。改めて主人公の代役として選ばれたのが、志村けんの盟友であるジュリーこと沢田研二だった。

私は物心ついたときからドリフターズを見て育った世代だ。そのドリフの番組に時たま出てくるジュリー。志村けんと息もピッタリのコント。それを見て子供ながらにゲラゲラ笑ったのをよく覚えている。

その子供心にはあまり整理がついていなかった。ジュリーが天下の二枚目歌手なのか、それともドリフにたまに出てくるだけの面白いお兄ちゃんなのか。ただ志村けんと沢田研二の2人が楽しそうにコントを演じていた姿はずっと記憶に残っている。そのジュリーが今回の代役を引き受けたと聞いたときは、なんだか胸が熱くなってしまった。

物語の主人公は、若い頃に映画監督を志しながらも、挫折して他の道を歩むことになってしまった老人。この老人が本当にだらしのない人で、酒と博打(ばくち)に明け暮れ、家族にもさんざん迷惑をかけ、鼻つまみ者になっている。いかにも落語に出てきそうな人物だ。とくに代表的な人情噺(ばなし)である「文七元結(ぶんしちもっとい)」や「芝浜」の主人公と似ている。

山田洋次監督は映画界の中でもとりわけ落語ファンとして有名だ。そんな監督だからこそ、この落語的な主人公を「映画俳優ではなく日本一のコメディアンに演じてもらいたい」と考えたのじゃないだろうか。