紀伊半島豪雨 母亡くした消防団元分団長の誓い

「長殿が全滅してしまった」。翌朝、目にしたその光景に衝撃を受けた。

竹尾さんの遺体が、知人宅から約10キロ離れた同村の風屋ダムで見つかったのは1カ月以上たった10月19日のこと。その間、消防団員として他の行方不明者の捜索など地域のために奔走し、周囲には気丈に振る舞った。竹尾さんの遺体発見を聞き、「覚悟はしていた。『やっぱりな』と思ったが、ほっとした。自分の気持ちに一段落ついた」と振り返る。長殿地区では、竹尾さんと知人夫妻の計3人が犠牲となった。

甚大な被害をもたらした10年前の豪雨を教訓に、地域の人たちの防災意識は大きく変わったと感じる。

特に一人暮らしの人や高齢者は、台風前などに早めに避難することが多くなったという。雨が降り続いた場合、自身も消防団のメンバーや地域住民と情報を伝え合い、状況把握に努める。「絶対の安全はない」と油断はしない。

自宅を流され、村内の仮設住宅や復興住宅で過ごした後、一昨年に同村上野地にある現在の自宅に移り住んだ。

村には10年たってもむき出しの山肌や河床の上がった川があちこちにある。自分が生まれ育った豊かな美しい緑色の故郷は大きく変わってしまった。「昔みたいに戻るんやろうか」。時折考え込むことがある。

だが、村外に住む子供たちに一緒に住もうと誘われても、「十津川に住み続けたい」と断り、今でも村の消防団の副団長として山岳遭難者の捜索など有事の対応にあたる。心にあるのは強い決意だ。

「元気なうちは住み慣れた村で暮らし、村の安全を守り続けたい」

(前原彩希)