【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(303)】広岡の執念 あの日誓った「巨人に勝つ」 - 産経ニュース

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勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(303)

広岡の執念 あの日誓った「巨人に勝つ」

巨人を破って2連覇を達成。チャンピオン・フラッグを手に、広岡達朗監督(手前左)と田渕幸一内野手(同右)を先頭に球場内を一周する西武ナイン
巨人を破って2連覇を達成。チャンピオン・フラッグを手に、広岡達朗監督(手前左)と田渕幸一内野手(同右)を先頭に球場内を一周する西武ナイン

第6戦を4―3とサヨナラ勝ちした西武は〝洗脳作戦〟通りに西本聖を捕らえた。

◇第7戦 11月7日 西武球場

巨人 001 010 000=2

西武 000 000 30×=3

(勝)東尾1勝1敗1S 〔敗〕西本聖2勝1敗

(本)山倉②(松沼兄)

七回、西本聖に疲れが見え始めた。スティーブが中前打、田淵四球、大田の投手強襲安打で無死満塁とし、テリーが低めのシュートをあの講習通り、逆らわずに左中間へ。これが走者一掃の二塁打となって逆転に成功。

午後4時33分、最後の打者・篠塚が二ゴロに倒れると、バンザイをしながらベンチから飛び出した田淵がマウンドの東尾に抱きついた。ドドーンと500発の花火が打ち上げられ、背番号「80」広岡監督が何度も宙を舞った。

「本当によくみんなを怒った。それもすべてこの日のため。誰だってしかめっ面をしてガミガミ言いたいものか。でも勝つためには、しなきゃいけないことがあるんだ」

広岡には「巨人に勝つ」という悲願があった。ヤクルト時代にも巨人には勝ったが、その時の相手は長嶋監督。今回は川上元監督の〝教え子〟といわれた藤田監督。執念が違った。

昭和41年、〝犬猿の仲〟といわれた川上監督に追われるようにして巨人を退団した広岡は翌年、単身渡米して米大リーグのキャンプを視察した。そして、その終わりにフロリダ州ベロビーチでキャンプを張る巨人を訪ねようとした。ところが、球団関係者から「来ないでくれ」と拒否されたのである。誰がそういわせたか広岡はすぐに察知した。悔しさと憤りの中で「巨人よりもっといい野球をするチームがあることを証明してやる」と心に誓った。

ところで、あの計画はどうなったのだろう。そう、巨人を倒して日本一になったら、胴上げで広岡監督を落とす―という田淵と東尾の秘密計画。後年、田淵に尋ねると―。

「東尾が〝おっさん、やるか?〟というから〝こんなすばらしい監督を落とせるか〟と答えたんだ。東尾のやつ怒ってたなぁ。〝おっさんのウソつき!〟と叫びながら胴上げしとったよ」 (敬称略)