令和4年度予算編成で各省庁が要望する概算要求が締め切られ、総額は過去最大の111兆円台となった。新型コロナウイルス関連は現時点で金額を示さない事項要求が多く、実際の要望はさらに膨らむことになる。
併せて菅義偉首相は自民党の二階俊博幹事長に追加経済対策の検討も指示した。与党には30兆円規模の大規模対策を求める声があり、こちらも3年度補正予算編成を念頭に歳出圧力が強まっている。
来年になってもコロナ禍が完全に収束するとは考えにくい。引き続きコロナ対策に万全を期すとともに、日本経済の中長期的な成長基盤を確立するためにも財政が果たすべき役割は大きい。必要な予算は十分に確保されるべきだ。
だからといって大盤振る舞いをすれば済む話でもない。コロナ初年の2年度は3次にわたる補正予算を追加した結果、歳出総額が過去最大の175兆円となった。このうち30兆円は執行されず、翌年度に繰り越されている。
医療現場で病床が不足し、緊急事態宣言で中小・零細企業や個人事業主、非正規労働者の苦境が続く現状をみれば、真に必要な支援が適切に届かないまま、実効性の乏しい予算が積みあがっていたことは自明だろう。
大切なのは「量」の追求ではなく、円滑で効果的な執行が担保された「質」の確保である。今後の予算編成で、政府・与党にはその点を強く銘記してほしい。
概算要求では、菅政権が重視する脱炭素化とデジタル化、地方創生、子育て支援の4分野に特別枠が設けられた。看板施策に予算配分を重点化するのは妥当だ。
だが、往々にして特別枠は、各省庁の似通った事業や、既存事業を焼き直しただけの施策を潜り込ませる温床となりがちだ。政策効果の高い事業を見極め、経済の底上げにつなげることが大事だ。
4年度からは人口の多い団塊の世代が後期高齢者になり始め、医療などの社会保障費がさらに膨らむことが予想される。コロナ対策で巨額の新規国債を発行した影響もあり、国債の償還や利払いに充てる国債費の概算要求は過去最大の30兆円超になった。
こうした財政悪化要因は、コロナ禍が収束した後も続く。年末までの予算編成過程では財政の持続可能性についても、議論を深めておくべきである。