【話の肖像画】台北駐日経済文化代表処代表・謝長廷(75)(3)ワクチンも震災支援も「善の循環」 - 産経ニュース

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台北駐日経済文化代表処代表・謝長廷(75)(3)ワクチンも震災支援も「善の循環」

日本政府が台湾に提供した新型コロナ用のワクチンを載せた日航機に深々と頭を下げた謝長廷代表 =6月4日、成田空港
日本政府が台湾に提供した新型コロナ用のワクチンを載せた日航機に深々と頭を下げた謝長廷代表 =6月4日、成田空港

《新型コロナウイルスへの対策で、日台は協力を強めている》

水際対策を徹底してきた台湾ですが、5月に感染が急拡大したとき、ワクチンの国際調達に障壁があって苦悩していました。そんなとき日本政府の迅速な決断で、6月4日にアストラゼネカ製ワクチン124万回分が台湾に提供された。その後も7月まで計3回、台湾に340万回分に近いワクチンが日本から届けられたのです。

ワクチンを載せた航空機が飛び立つたび、私は成田空港で離陸を見届けてきました。蔡英文総統も表明していたように「まさかの時の友こそ真の友」ですね。不安が広がっていた台湾で、日本からの支援を人々は心強く感じました。それ以前の台湾でのワクチン接種率は1%にも満たない水準でした。世界保健機関(WHO)への加盟が認められていない台湾に、真っ先に救いの手を温かく差し伸べてくれたのが日本だったのです。

《台湾に対する日本の対応はスピード感があった》

ワクチン提供を私が最初に日本側に打診したのは5月24日で、6月4日の空輸まで11日しかかかりませんでした。安倍晋三前首相をはじめとする日本の関係者のご尽力が、非常に大きかった。5月24日の夜、東京・白金台の台北駐日経済文化代表処の公邸に招いた米国のジョセフ・ヤング駐日臨時代理大使(6月に離任)と薗浦(そのうら)健太郎元首相補佐官で日米台の意見交換会をしたとき、ワクチンをめぐる台湾の事情を話しました。そして5月に日本で承認されたものの、公的接種予定のなかったアストラゼネカ製ワクチンを台湾に提供できないか提案したところ、2人とも賛同してくださって、薗浦さんはすぐ安倍前首相に報告してくれました。

《海外からのワクチン調達について、台湾は中国の妨害で難しくなっている、と蔡総統が発言したことがある。日本からの提供に障害はなかったのか》

まずは日台間で迅速な輸出入手続きの完了と情報管理が重要でした。何らかの妨害が入らないともかぎらない。日本の防衛省はワクチンを運んだ航空機が台湾と空域が接する地点まで、静かに見守ってくれたと聞いています。こうした心遣いにも深く感謝します。

台湾も力を尽くしました。ワクチンの緊急輸入など前例のないことで、法的な手続きもはっきりしていなかった。ただ幸いなことに私は弁護士で、書類の作成やチェック、当局者との交渉まで引き受けました。それに私は行政院(政府)の高官にも直接、連絡できる立場にあった。順調に進んだのは、台湾と日本の双方が強い信頼関係で結ばれていたからでしょうね。

《今回のワクチン提供について、日本政府は東日本大震災などの災害やマスク不足の際、台湾から義援金や支援物資が贈られたことへの「返礼」とした》

台湾と日本は震災など自然災害でこれまでも、互いに救援や支援をしてきました。その結びつきを私は「善の循環」と考えています。善意が次の善意を呼ぶのです。昨年春に感染が急速に広がった時期、マスク不足に陥っていた日本に台湾製マスク200万枚を提供しました。

昨年2月から台湾は官民でマスク増産策を始め、台湾のみならず国際社会に貢献できる態勢を整えていました。台湾はいまや1日当たり2千万枚のマスク生産能力があります。世界第2位の供給源です。この8月もマスク124万枚を日本に提供しました。安全のため高品質のマスクを毎日のように新品に取り換える必要がありますが、その費用は決して安くありません。日々の購入が容易ではない方に配布していただければうれしい。医療用の防護服なども含め、台湾はこれからも日本を支援していくつもりです。(聞き手 河崎真澄)