【ビブリオエッセー】社員たちはどう闘ったか「しんがり―山一證券 最後の12人」清武英利(講談社+α文庫) - 産経ニュース

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ビブリオエッセー

社員たちはどう闘ったか「しんがり―山一證券 最後の12人」清武英利(講談社+α文庫)

1997年、山一證券は破綻した。「社員は悪くありませんから」と社長が号泣した記者会見が強く印象に残っている。当時、住専問題や名門銀行の破綻も記憶にある。しかし、十代だった私はそれ以上に関心を持てなかった。内容がとても複雑だったのだ。

あれから二十数年、最初はあの「清武の乱」、巨人騒動の本人が著者だということに興味をもった。刊行後にドラマ化されたことも知り、昔の会見を思い出し、このノンフィクションを手に取った。自主廃業に至るまでの詳細をようやく知ることができた。

とはいえ、「簿外債務」とか損失隠しの「飛ばし」とか、経済ニュースにうとい自分は言葉につまずきながらの読了。社内のドラマには引き込まれた。顧客の怒声を浴びながら清算業務に追われた社員たち。大変な日々の中で真相究明の「後軍(しんがり)」を務めた社員たちの最後の仕事が始まる。

中心メンバーは「場末」と呼ばれたビルにある業務監理本部、通称「ギョウカン」に集まった社員たちだ。社内調査委員会が設置され、敗戦処理は困難を極めた。地道な聞き取り調査が続き、「魂の報告書」がまとまる。

なぜ自分たちがしんがりとして残ったのかという問いかけに「誰かがやらねばならなかったからだ」と答えている。それぞれの正義を貫いたのだ。私はそう受け止めている。

破綻から20年後の2017年、著者が再びモトヤマ(元山一社員)の百人を訪ねた『空あかり』(講談社)も読んだ。誰もが山一への思いを抱えながら転職を重ね、再起をかけて挑むなど、その後の人生の険しさを語っていた。

『しんがり』は闘いの記録である。

横浜市南区 ゆかり(41)