【鑑賞眼】「PANCETTA special performance〝米〟」悲しくなるほど面白い米尽くしのコント劇 - 産経ニュース

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「PANCETTA special performance〝米〟」悲しくなるほど面白い米尽くしのコント劇

葬式に集まった花屋1を演じる一宮周平、2の佐藤竜、3の木村文香、4の瞳、5の新行内啓太(しんぎょううちけいた)。手に持った紙をめくると違う人物になるシステム(市川唯人撮影)
葬式に集まった花屋1を演じる一宮周平、2の佐藤竜、3の木村文香、4の瞳、5の新行内啓太(しんぎょううちけいた)。手に持った紙をめくると違う人物になるシステム(市川唯人撮影)

ナンセンスでシュール、悲しくなるほど面白い。コントと演劇を足して2で割ったような新感覚オムニバス。

業者による不穏な農地転用がうかがえる「opening」から始まり、親族近所ら約88人が集まる葬式のドタバタを描いた「八十八」、精米ロボットと無駄の多い中年男性による「米マックス」、空から米が降ってくる「くもりのち米」と、一見それぞれ独立した物語が展開。しかし最後の「謝罪会見」で、各話が1つの世界線に収束していく。公演を貫くキーワードが「米」。

「PANCETTA」(パンチェッタ)は一宮周平が企画、脚本、演出を行う団体で、平成25年に活動を開始した。今回は27年に発表した同名作品の再演だが、大幅な書き換えにより「まったく別の作品となった」という。なお初演はYouTubeで公開されている。

舞台上にはピアノ(加藤亜祐美)とチェロ(志賀千恵子)のほかは、箱がいくつか転がっているだけ。組体操を含めた俳優陣の身体表現で、田植えトラクターから中年男性の体重増減まで、さまざまな情景を展開していく。

各話とも独創的な設定がまず目を引く。持っている紙をめくるとそこに書いてある肩書の人物として扱われる人々(八十八)や、問題書類の該当箇所を黒塗りする専門部署「黒塗り課」(くもりのち米)など、現実離れしていて奇妙だ。話が進むにつれ、悪徳地上げ屋が農村の老女(瞳)を言葉巧みに丸め込むさまや、パワハラ理不尽上司(佐藤竜)とその部下たちのやりとりなど、異常に生々しい人間の営みが描かれ、感情を揺さぶられる。しかし観客が居たたまれない気持ちになる寸前、いずれの話にも、例えば金盥が降ってくるような古典的なオチがつけられ、重くなりかけた空気は壮大に四散していく。

たった5人の俳優で破壊と創造を繰り返し、悲哀から滑稽を引き出すパワーの前では、涙を流して笑うしかなかった。

8月24日、東京都世田谷区の本多劇場。(三宅令)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。