東京・池袋で平成31年4月、乗用車が暴走して通行人を次々とはね、松永真菜(まな)さん=当時(31)=と長女、莉子(りこ)ちゃん=同(3)=が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三被告(90)の判決公判が2日、東京地裁で開かれた。下津健司裁判長は、事故原因が飯塚被告のペダルの踏み間違いだったと認定。「被告は自らの過失を否定する態度に終始しており、長期の実刑は免れない」として、禁錮5年(求刑禁錮7年)を言い渡した。
判決理由で下津裁判長は「自らの踏み間違いに気づかないままアクセルペダルを最大限まで踏み込み、車を加速させ続けて事故を起こした」と指摘し、約10秒にわたりアクセルを踏み続け最大時速約96キロまで加速させた過失が原因と認定。事故の前後で車両に異常はなかったことも認めた。
ブレーキペダルを踏んだにもかかわらず暴走したとする弁護側の主張についても「考え難い」と退けた。
また、事故の際にアクセルペダルを目視で確認したとする飯塚被告の供述についても「想定外の事態に狼狽(ろうばい)してパニック状態に陥ったと認められ、冷静な確認ができたかは疑わしい」と信用性を認めなかった。
検察側は同罪の法定刑の上限となる禁錮7年を求刑したが、地裁は負傷者への損害賠償が完了、または行われる見込みであること、被告に過度の社会的制裁が加えられたことなどに言及。「過失は悪質だが酒気帯び運転などの悪質な運転行為に伴うものではない」と量刑理由を説明した。