《がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許をめぐり、ノーベル医学・生理学賞受賞者の本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授が小野薬品工業(大阪市)を相手取った訴訟の口頭弁論は大阪地裁で2日に行われ、昼の休廷を含めて約6時間に及んだ。最終盤では、小野薬品の相良暁(さがら・ぎょう)社長に対して本庶氏の代理人弁護士が尋問。本庶氏は証言台に座る相良氏に鋭い視線を送った》
--血のにじむ努力でオプジーボを製品化したと述べたが、小野薬品にとっては(特許侵害だと訴えたメルク訴訟に負ければ)特許が無効になり大きな損害を受ける。本庶氏とのロイヤルティー見直しの交渉のテーブルにつかなかったのは上場企業として無責任ではないか。訴訟に敗れても問題ないと判断していたのか
相良氏「その認識は違う。訴訟に協力してもらえなかったら、というのは最悪の想定で、問題ないとは思っていない」
--本庶氏の協力なしにメルク訴訟は勝てないと認識していた
相良氏「はい」
--本庶氏とのロイヤルティーをめぐる交渉で、平成26年9月に京都大で対面した。その後は具体的にどういう努力をしたのか
相良氏「本庶氏をしばらく放っておくよう(交渉担当の社員に)指示した。私も仕切り直したかった」
--メルク訴訟で得た収入の本庶氏への配分額の割合(40%)は、相良社長のほか法務部長や知財部長らで決めた
相良氏「おおむねその通り」
--もし交渉の際に、本庶氏に具体的に「40%で協力する」と言われていたら応諾(おうだく)したか
相良氏「検討していた」
--拒否する理由があるのか
相良氏「その数字だけでは決めていない。18年に結んだ契約内容を基本に-」
《相良氏が答える途中で、質問した本庶氏の代理人弁護士が「もうけっこうです」と発言を遮った。法廷内はいっそう緊迫した空気に包まれた》
--26年6~9月にかけて小野薬品側から4、5通ほど本庶氏に対し、メルク訴訟への協力を要請する手紙を出している。その中でロイヤルティーの交渉への全面的解決について触れられていないのはなぜか
相良氏「分かりません。書かれていない理由を説明するのは難しい。その時々の判断です」
《相良氏に対する尋問は、この後に裁判官がいくつかの質問をして終了。この日の裁判は終わった。閉廷後、今後の訴訟の方針を確認する非公開の進行協議が行われた。本庶氏の代理人弁護士によると、互いの条件が折り合わず昨年にいったん中断した和解協議の再開が、裁判所から促されたという。一方、再び折り合わなかった場合に向けて次回の弁論期日も設定された。和解の協議が進まなければ、裁判は近く結審する見通しだ》=終わり