池袋暴走事故判決 遺族「前向き生きるきっかけに」

【池袋暴走事故に判決】判決公判を終え会見する松永拓也さん=2日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ(桐山弘太撮影)
【池袋暴走事故に判決】判決公判を終え会見する松永拓也さん=2日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ(桐山弘太撮影)

「少しでも前を向いて生きていくきっかけになる」。東京・池袋で平成31年4月に発生し母子2人が死亡した暴走事故で、東京地裁が2日、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた飯塚幸三被告(90)に対し、禁錮5年の実刑判決を下した。亡くなった2人の遺族、松永拓也さん(35)は判決後の記者会見でこう話し、飯塚被告に対し「罪を認め、心から謝罪してほしい」とメッセージを送った。

この日、亡くなった妻の真菜(まな)さん=当時(31)=と莉子(りこ)ちゃん=同(3)=の遺影を携えて判決公判に臨んだ松永さん。判決について「アクセルとブレーキを踏み間違えたという客観的な認定が下されてよかった」と評価した。

公判では、下津健司裁判長が判決の言い渡し後、飯塚被告に対し「判決に納得したならば過失を認め、遺族に真摯(しんし)に謝っていただきたい」と説諭する場面も。「救われる気持ちになり、涙が出た」といい、「涙で見えなかったが、(飯塚被告は)うなずいていたと聞いた。それが本心であってほしい」と語った。

松永さんとともに会見に出席した真菜さんの父、上原義教さん(64)も「過失を認めない被告に苦しんできた。判決を受け入れ、心からの謝罪をしてほしい」と訴えた。

遺族は約11カ月に及ぶ公判に参加し、一貫して無罪を主張する飯塚被告と向き合い続けた。松永さんは「2人が戻ってくるわけではないのでやりきれなさはあるが、判決を聞いた(真菜さんの)家族や私の両親から安堵(あんど)したような表情がうかがえた。参加してよかった」と振り返り、今後も、交通事故防止のための講演などの活動を続けると明かした。

ただ、飯塚被告は判決に不服があれば、2週間以内に控訴することができる。松永さんは「心情としてはこれ以上争いたくないが、控訴する権利は尊重している」と強調。その上で「罪を認め、心から謝罪するタイミングは、刑が確定してから。謝罪があれば、受け入れざるを得ない。今後の被告の行動を見守りたい」と語った。(塔野岡剛)

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