新技術や製品の実用化を視野に入れた大学と企業の「産学連携」について、政府は国家の持続的発展を見据えた重要施策に位置づけている。研究成果が実用化されれば企業側は大学側に投下した資金の回収に加え、莫大(ばくだい)な利益を得ることも可能だが、製薬をはじめとした生命科学分野の知的財産の利益配分の枠組みは確立されておらず、課題が多い。
がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許をめぐり、平成30(2018)年にノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授が、製造販売元の小野薬品工業(大阪市)に約262億円の支払いを求めた訴訟の口頭弁論が2日、大阪地裁で開かれ、双方の深い溝が改めて浮き彫りになった。オプジーボは本庶氏が発見した免疫を抑制するタンパク質の研究成果をもとに、小野薬が実用化した治療薬。利益に対する対価の割合をめぐり、長年両社の対立が続いてきた。
本庶氏が訴訟を起こした背景には、基礎研究における「発明の対価」が不当に低いとの思いがある。