【ビブリオエッセー】名作の舞台をたどる時間旅行 「地図で読む松本清張」北川清・徳山加陽(帝国書院) - 産経ニュース

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名作の舞台をたどる時間旅行 「地図で読む松本清張」北川清・徳山加陽(帝国書院)

新刊書コーナーで見つけてすぐに読み始めた。清張の名作に出てくる数々の舞台をめぐる旅の本である。主役は地図。しかも現在の地図だけでなく、作品が書かれた頃の古い地図を使った道案内はさすがに帝国書院。地図と教科書の出版社ならでは。二次元の地図を時間旅行する多元的な楽しみはまさに新ジャンルだ。

清張作品は何冊も読み、映画でテレビで何回も見ているので往時の姿は懐かしく、現在の変わりように感慨も深い。本書では『ゼロの焦点』から『天城越え』まで、特に人気のある11作品を取り上げている。

個人的にはまず『砂の器』。あらすじ解説の後、鍵になる東北弁をめぐる二つの場所、秋田県の亀田と島根県の亀嵩が地図、小説の場面とともに記され、殺人事件の発端になった東京の蒲田操車場へと移る。「国電蒲田駅の近くの横丁」「間口の狭いトリスバー」など引用の数々がまた懐かしい。

やはり『点と線』が気になった。時刻表トリックの発端はまず東京駅。それから男女の遺体が見つかった福岡県の香椎海岸。ここでは現在と当時の地図を並べて解説し、昭和32年の町歩きを再現する。そして青函連絡船がつないでいたかつての津軽海峡へ。

取り上げられた清張作品は推理小説で、鉄道や時刻表が重要な脇役だった。就航したばかりの航空路線も出てきた。本書には当時の路線や駅の構内図なども詳しく載っている。巻末には昭和32年の日本地図が掲載されていた。

今後もかつての小説や映画、ドラマの舞台を訪ねる地図の時間紀行を読んでみたい。浮かぶのは「男はつらいよ」シリーズ。地図はいつでも記憶と想像力をふくらませてくれる。

滋賀県東近江市 太田吉光(74)

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