【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(302)】伝説の洗脳作戦 西本攻略の秘策は「がまん」 - 産経ニュース

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勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(302)

伝説の洗脳作戦 西本攻略の秘策は「がまん」

日本シリーズ第1戦前日練習 互いの健闘を誓い、握手する西武・広岡達朗監督(右)と巨人・藤田元司監督
日本シリーズ第1戦前日練習 互いの健闘を誓い、握手する西武・広岡達朗監督(右)と巨人・藤田元司監督

昭和58年の日本シリーズは西武と巨人との戦いとなった。

①10月29日 西武○6―3●巨人

二回、2死一、三塁で田淵が江川から左翼へ3ラン

②10月30日 西武●0―4○巨人

原が一回、高橋から先制2ラン。西本が4安打完封

③11月1日 巨人○5―4●西武

九回2死一、三塁で中畑が左前へサヨナラ安打

④11月2日 巨人●4―7○西武

田淵が4打数3安打の大暴れ。巨人は江川でまた勝てず

⑤11月3日 巨人○5―2●西武

クルーズが九回2死一、二塁でサヨナラ3ラン。巨人が〝王手〟

「ボクの15年間のプロ生活を懸けて江川を打つ」と宣言した主砲・田淵の言葉通り、江川攻略に成功した西武だが、逆に西本には第2戦、第5戦と抑え込まれ、巨人に〝王手〟を掛けられて本拠地へ戻った。

11月4日、移動日。この日、西武球場で行われた練習が、のちに球界で『広岡の洗脳作戦』といわれた伝説の練習である。広岡監督は選手全員を宿舎に集め、静かにこう説いた。

「7分3分でウチが有利です。大丈夫、先に王手をかけられるのは予想に入っていた。ここ所沢に帰れば、ウチにはもう負ける要素がない」

選手たちは首をかしげた。「では、その訳を説明しよう」と広岡は続けた。

「第一に選手の量で巨人は苦しい。ウチには杉本や松沼弟と傷ついていない投手がいるが、巨人は江川が崩れ西本は中2日。槙原程度の投手ならパにはいくらでもいる。第6戦に勝ち、第7戦に出てくる西本を攻略すればいいだけだ」

広岡は西本攻略の〝秘策〟も用意していた。

「あのシュートは打てる。彼のシュートは落ちる。だからカーブのタイミングで打てばいいのです」。西本の2試合分のビデオを映し、監督自らがバットを持ってタイミングのとり方を伝授した。

「第5戦のように、どんどんファウルしてタマ数を投げさせ、甘くなったところを狙う。西本を倒すには〝がまん〟することです」

午前11時から始まった洗脳作戦は夜まで続いたという。 (敬称略)