主張

アフガン撤収完了 無残な終幕は米の汚点だ 日本政府は協力者救出を急げ

バイデン米大統領がアフガニスタン駐留米軍の撤収完了を発表した。2001年の米中枢同時テロを機に始まり、「米国史上最長の戦争」と呼ばれた米軍のアフガン駐留が終わった。

莫大(ばくだい)な費用を投じて、若い兵士の犠牲を強いる作戦を永遠に続けるわけにはいかない。だが、性急な撤収は、過激武装勢力の自爆テロを許し、米兵らに多数の犠牲を出した。無残な終幕は、米国の威信を損なった。

最大の失態は、米国や同盟国の国民、アフガン人の協力者の安全な国外退避が米軍の撤収完了に間に合わなかったことだ。

タリバン「退避」履行を

米軍が8月末を期限に撤収を始めると、イスラム原理主義勢力タリバンが大攻勢をかけ、アフガン政府はあっけなく倒れた。見通しを誤ったバイデン政権は、撤収期限を延長し、米軍に人々の安全を守りきらせるべきだった。米野党共和党が、アフガン撤収は失敗だと批判したのは当然だ。

国連安全保障理事会は、希望者の安全退避をタリバンに求める決議を採択した。日米欧などの共同声明は、タリバンが出国を保証したと明らかにした。

タリバンはこの約束を守らねばならない。それができないなら今後、多くの国が話し合いの相手とみなさないと覚悟すべきだ。

懸念されるのは、性急な撤収がタリバンなどの過激組織、中国など専制国家の双方に対し、米国は与(くみ)しやすしと思わせる危険なシグナルを送ってしまったことだ。バイデン政権は行動で、「強い米国」を取り戻す必要がある。

現状、国際秩序への最大の脅威は、国際ルールを顧みずに現状変更を企てる中国の覇権追求だ。バイデン政権は中国への対応を最優先とし、外交、安全保障上の重点を過激組織が影響力を持つアフガンや中東から、インド太平洋地域へとシフトさせている。

それ自体は、日本の国益とも合致する。日本は、バイデン政権のアフガン撤収の決断を重く受け止め、米国との対中連携を一層進めるべきだ。

米国のアフガン撤収に伴う混乱は、日本の危機対処能力の欠如を露呈させた。自衛隊機派遣による退避作戦の失敗である。政府は猛省し、問題点を洗い出して改めなくてはならない。

首都カブールがタリバンに制圧された8月15日前後から各国の軍用機による退避作戦が実施された。米国が10万人以上、英国が1万5千人以上、ドイツが約5千人、韓国が390人を救い出した。自衛隊機で出国したのは、日本人1人と米国から依頼されたアフガン人14人の計15人だった。

日本は日本人数人や日本大使館勤務などのアフガン人とその家族の約500人の国外退避を目指した。だが、自衛隊による警護もなく、自爆テロの発生もあって空港にたどり着けなかった。

米軍の完全撤収で国際空港への離着陸は当面困難だ。政府は隣国パキスタンで待機する自衛隊の撤収を決めた。

外務省は失態猛省せよ

それでも、取り残された約500人を見捨ててはいけない。人道と日本の信義が問われている。タリバンの要請でトルコが国際空港を管理する話が進んでいる。政府は自衛隊機や民間機による退避を追求してもらいたい。

政府の一連の対応には多くの疑問符がつく。外務省の失態は本当に情けない。カブール制圧時に日本の岡田隆大使は現地に不在だった。残る日本人大使館員は同17日、英軍機で国外へ脱出した。アフガン人職員らを伴わずに、である。数人でも大使館員を現地に残さなかったことが、退避作戦に響かなかったわけがない。

政府の自衛隊機派遣決定の遅れは致命的だった。邦人輸送の自衛隊派遣は自衛隊法上、外相が依頼する。派遣の正式決定はカブール陥落から8日もたっていた。

8月上旬から政府は民間機による退避の準備を進めていたというが、並行して自衛隊機派遣も準備し、現地情勢の急転で直ちに切り替えるべきだった。情勢分析も甘かったのではないか。

国家安全保障局(NSS)、外務・防衛両省はもとより、菅義偉首相や加藤勝信官房長官、茂木敏充外相、岸信夫防衛相、与党幹部はいったい何をしていたのか。コロナ対応と政局だけしていればいいわけではない。