【がん電話相談から】がん手術で身体機能の一部を失ったら、どう向き合う? - 産経ニュース

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がん電話相談から

がん手術で身体機能の一部を失ったら、どう向き合う?

がん治療の現場では、手術で身体機能の一部が失われることも珍しくなく、術後に困難な生活を余儀なくされる患者は深刻な悩みに直面する。パラリンピック東京大会で活躍する選手も乗り越えてきた、障害を背負うことの試練。がん患者の心のケアを担当するがん研有明病院腫瘍精神科部長の清水研医師に、この問題にどう向き合えばよいのかを聞いた。

――身体機能を失うのを嫌い、手術をためらう患者も多いのでは

「その手術をしないと命が助からない場合、ほとんどの人は迷わず手術を決断します。一方、いくつか選択肢があるとき、例えば患部の神経を切除すればがんを完全に除去できるが歩行が困難になり、神経を温存すれば歩行機能が保たれるが根治できない可能性が高まるというような場合、判断は難しい。どちらも選び切れず、悩んだ末に鬱症状になる患者もいます」

――障害を負うことで気持ちがふさぎ込むときはどうしたらよいでしょう

「障害を負うことの何が心配なのかが漠然としている患者には、その点を質問していきます。すると本人の頭の中で具体的に治療を受けるメリットとデメリットが徐々に整理されます。そして、厳しい状況と向き合いながらも、治療を決断するに至ることが多いです。こんな時には弱音を吐くことも大切です。例えば人工肛門になってしまうとか声が出なくなるなどの障害が避けられず、ふさぎ込んだりする場合は、しばらくふさぎ込んでもよいのです。こういう状況に置かれると、人は悲しくなります。悲しみは大切なものを失ったときに出てきますが、実は心を癒やしてくれる効果もあるのです」

――障害を負い、家族に負担をかけたくないという患者もいるでしょうね

「子供の時の厳しいしつけなどで『周りに迷惑をかけてはいけない』と強く思う人もいます。しかし障害を負って一番大変なのは患者本人でしょう。落ち度があったわけでもなく、だれもが同じ状況になってもおかしくない。だから私は患者に『困ったときはお互いさま。堂々としていてください』と話します。感謝の気持ちは必要ですが、申し訳ないとか情けないといった自己否定的な気持ちは持たないでほしいと願います」

――逆に、家族は患者をどう支えたらよいでしょう

「いきなり励ましたりするのではなく、まずは本人の気持ちを理解しようとすることが大切です。以前できていたことができなくなることについて、しばらくそっとしておいてほしいのか話したいのか。また、何に困っているのかを理解し、手伝うことは手伝う。『家族みんなで、この困難を乗り越えていこう』という気持ちが大事です」

――パラリンピックの選手の活躍は障害を負う人にも希望を与えますね

「国の代表にまでなる選手には、もともと超人的な資質の方が多く、また、それぞれの葛藤の時期を乗り越えられたからこそ今があるのでしょう。もちろん、選手に勇気はもらいます。一方で、障害を負っても明るく前向きに立ち向かうという姿だけが、あるべき形としてクローズアップされることは心配です。皆がそういう姿勢である必要はなく、むしろ、くよくよしたり落ち込んだりして、自分なりに障害に向き合えばいい、というのが私からのメッセージです」(聞き手 佐藤健二)

がんの悩みや疑問に答える「がん電話相談」(がん研究会、アフラック、産経新聞社の協力)は毎週月~木曜日(祝日除く)の午前11時~午後3時に受け付けます。電話は03・5531・0110、無料。相談は在宅勤務でカウンセラーが受け付けます。寄せられた相談内容を専門医が検討し、紙面やデジタル版に匿名で掲載されることがあります。個人情報は厳守します。