ビブリオエッセー

愛されることの喜びを 「子どもへのまなざし」 佐々木正美(福音館書店)

長女に女の子が生まれた。私たちにとっては初孫で3カ月を過ぎた。妻は「この赤ちゃんは私が育てる」と言うほどメロメロだった。もちろん冗談だが少しでも赤ちゃんといたいと願う妻の気持ちはよくわかる。

私たちも一男一女を育てたが、今さらながらもう一人くらい子どもがいてもよかったと少々後悔している。育児は大変だったが手がかからなくなると寂しく感じたものだ。

『子どもへのまなざし』は育児の心構えを教えてくれた本だ。著者は児童精神科医。この第1巻では乳幼児期の育児の大切さを五重塔の土台にたとえ、人を信頼できる子どもに育てようと説く。そのため「乳幼児期の育児は、ひとことでいえば、子どもの要求や期待に、できるだけ十分にこたえてあげることです。せんじつめればそれだけのことです」と言う。

要求をいつもかなえてやるのは難しいが著者は、親は常に子どもの目線で考え、子どもの最大の味方になるようにと強調する。「つぎの時代を生きる子どもたちに、十分に愛されることの喜びを与えること、育児はそれで十分なのですね」と。そうして社会性も育まれる。

ふり返れば私も、できるだけ子どもの要求をかなえようとした。仕事が昼からだったので毎日、朝6時から正午まで外で一緒に遊んだ。インドネシアの田舎に暮らしていたという環境もあるが木登りも泥遊びも好きなだけやらせた。絵本もせがまれれば何百回でも同じ絵本を読んだ。すべて子どもたちが望むままに。

この本のシリーズ全3巻を知床に暮らす長女に贈った。読んでくれたかな。きっと子育ての大きな味方になってくれると信じている。

北海道恵庭市 佐々木晋(60)

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