警視庁初のパラ選手、堂々の戦い「署の誇り」 アーチェリー大山晃司

【東京パラリンピック2020】<アーチェリー男子個人(車いす)準々決勝>的を狙う大山晃司=夢の島公園アーチェリー場(鳥越瑞絵撮影)
【東京パラリンピック2020】<アーチェリー男子個人(車いす)準々決勝>的を狙う大山晃司=夢の島公園アーチェリー場(鳥越瑞絵撮影)

警視庁初のパラリンピアンが、夢の舞台で輝きを放った。パラアーチェリー男子個人(車いす)に出場した大山晃司(29)。月島署の職員としてフルタイムで働きながら、アスリートとしての躍動も追い求めてきた。血のにじむ努力でたどりついた東京パラリンピック。メダルには届かなかったが、懸命に歯を食いしばり、矢を射続けた。

「メダルを勝ち取る」と臨んだ1対1形式の決勝トーナメント。1回戦は1本ずつ矢を放って勝敗を決める延長戦にもつれ込み、わずか3ミリの差で劇的な勝利をつかんだ。だが、準々決勝では格上の相手に序盤から苦戦。終盤に追い上げたものの、及ばなかった。

大学3年時の体操部での練習中、床運動の着地に失敗し、頸椎(けいつい)を損傷。以来、首から下が動かなくなった。突然訪れた車いすでの過酷なリハビリ生活。それでも、スポーツへの情熱が色あせることはなかった。車いすでできる競技を探し、平成28年にアーチェリーに出合った。

右腕が思うように動かず、口で弓を射る。口での射形は負担が大きく、同じ方法を用いる選手は少ない。競技を始めたころは、食事をとるのもままならないほど、口の中が血だらけになった。地道に努力を積み重ね、29年には全国大会で優勝を果たした。

もう一つ、目指したのが警察官だった。中学時代、立ち寄ったファストフード店で声を掛けられた警察官の、親しみやすく頼もしい姿にあこがれた。

3回目の試験で、警視庁行政職員に合格。現在、月島署会計課で、落とし物の窓口業務や出張費の処理などを担当する。明るい性格で、同僚の工藤功二さん(29)とはプロテイン摂取など健康面の話で盛り上がる。上司の羽立政寿さん(50)は「いつも一生懸命で、どんな仕事も任せられる」と信頼を寄せる。

「障害があるからあきらめるのではなく、どのような状況でもできることを探す」。大山が貫く信念だ。

月島署の冨田利雄署長は「警察運営にも通じること。コロナ禍でいろいろな障害や困難があるが、できることを探す。大山選手が署にいるのは誇りだ」と目を細める。

目標には届かなかったが、堂々の戦いぶりで存在感を示した。すでに3年後のパリ大会を見据える。「手ごわい海外選手に刺激を受けた。もっとうまくなって、メダルを取りたい」

(松崎翼)

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