【となりのSDGs】定価の半値以下も 食品ロス削減と困窮者支援をつなげる - 産経ニュース

メインコンテンツ

となりのSDGs

定価の半値以下も 食品ロス削減と困窮者支援をつなげる

定価の半額以下の商品も多くならぶエコ・イート玉川店
定価の半額以下の商品も多くならぶエコ・イート玉川店

冷やし中華のつゆ28円、コーラ48円-。大阪市福島区にあるショップ「エコ・イート玉川店」では、賞味期限が迫るなどした商品を格安で販売している。消費者に実際に手にとってもらうことで、まだ食べられるのに廃棄される「食品ロス」削減への意識を高めてもらうのが狙いだ。一方で利益や一部の食品は、生活困窮者の支援にあてる活動につなげられている。

賞味期限切れ間近

「買ったらすぐ食べちゃうから賞味期限は気にならない。十分おいしいですからね」

そう言いながら会社帰りの主婦が棚に並んだ麺つゆに手を伸ばしていた。

店先には定価の半値や4分の1ほどになったペットボトル飲料やレトルト食品、菓子、調味料などが並ぶ。商品紹介には賞味期限も明記され、あと数日で期限が切れる商品もある。

安全に食べられる期限を示した「消費期限」とは異なり、「賞味期限」はメーカーが設定した、品質が変わらず、おいしく食べられる期限のこと。小売店では製造日から賞味期限までの期間を3等分したとき、賞味期限が近づく最後の3分の1の期間になると返品や廃棄の対象にするという商習慣がある。返品された品はメーカーや問屋の在庫として積みあがり、廃棄処分のコストもかかる。エコ・イートではそういった商品を安値で買い取っている。

店長の笹井実人さんは「仕入れ商品はその時々のメーカーや問屋の在庫状況次第なので、品ぞろえは日々異なります。お客さんの8割近くがリピーターで、宝探しのような感覚で買い物を楽しんでもらってます」と話す。

身近な貧困に気付く

エコ・イートを運営するのはNPO法人「日本もったいない食品センター」だ。代表理事の高津博司さんは商社を営んでおり、数年前、取引先から相談されたのをきっかけに、賞味期限が迫った商品の取り扱いを始めた。

ネット販売を始めたのに加え、社会貢献の一環として社会福祉施設などに届けようと試みた。ところが、賞味期限切れが近い商品への理解が得られないことも多かった。その中で、夫の家庭内暴力から逃げるためや、収入が安定しないなどの理由で母子が暮らす母子支援施設からは提供を喜んでもらったという。

大阪市内にある施設を初めて訪ねたときのことだ。子供たちにあめを渡すと、「食べていいの」と言いながら大きな笑顔を見せてくれた。「私たちが余った食品を取り扱う一方で、おやつだけでなく、3食もまともに食べられない子がこんなに身近にいることを知った。そこから一生懸命勉強して、NPOを設立しました」

令和元年4月には実店舗のエコ・イート玉川店を開店。利益の一部をNPOに回すことで、困窮者や福祉施設に支援する仕組みにした。今では関東から沖縄まで全国13カ所にフランチャイズ契約するなどした「エコ・イート」の店舗がある。各店舗はNPOに加盟し、協力金を納入する。

平成30年度の国内の食品廃棄量は600万トンに上る。その一方で、事務所に食料支援を直接求める声は多い。新型コロナウイルスの影響でその数も増えている。高津さんはこれからも契約店舗を増やしたい考えだ。「普通の流通の邪魔をすることはしません。ただ、食品ロスを削減しながら、困窮者を食や教育の視点で支援できる体制づくりを作りたい」と模索を続けている。

公共冷蔵庫を寝屋川に

「本当に困っている人の中にはなかなか声を上げられない人も多い。そういった人に届けられたら」

大阪府寝屋川市で40年以上、ボランティア活動や高齢者や障害者、子供の生活支援事業を続けているNPO法人「寝屋川市民たすけあいの会」が公共冷蔵庫「コミュニティフリッジ」の設置を目指している。

コミュニティフリッジは、市民や企業が寄付した食料品を冷蔵庫で預かり、登録済みの困窮家庭などに無償で提供する仕組み。24時間、無人で運用する。国内では昨年11月、岡山市内に第1号が誕生し、その運営ノウハウを寝屋川でも導入する予定だ。ネット上で資金を集めるクラウドファンディングも実施した。

寝屋川市民たすけあいの会の後藤雅子さんは「コロナ禍で突然収入が断たれるなどして急に生活困窮した見えない貧困者が増えています。そういった人たちを支えたい」と話す。一方で、従来支援してきた人の中には「感染が怖いから来ないでください」と訪問すら拒絶されるケースも出てきたと心配する。

事務局長の冨田昌吾さんは「支援を受けることに、人目を気にされる方もいる。困窮しておられる方となんとかつながりを持つためにも、こういった無人の公共冷蔵庫を活用していきたい」と話している。