主張

言論統制法案 韓国はどこへ向かうのか

韓国国旗
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価値観外交の根幹を成す共通の普遍的価値とは自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済―を指す。

韓国で30日にも強行採決に持ち込まれる「メディア仲裁法」の改正案は言論や報道の自由を侵害し、統治者も法によって拘束されるとする「法の支配」にも反する。

韓国は誤った法治に陥ることなく、自由主義陣営のあるべき姿に立ち返るべきである。

改正案は「故意や重過失」による虚偽・捏造(ねつぞう)報道に損害額の最大5倍の賠償を報道機関に命じると規定し、訂正記事は原則、元の記事と同量で伝える、などとしている。だが基準が不透明で、政権による恣意(しい)的運用が懸念される。

背景には、文在寅大統領の後継候補が次々とスキャンダルで失脚したことへの与党側の反発があるとされる。野党側はこれを「言論統制法案」と呼び、韓国記者協会は「メディアに猿ぐつわをかませる悪法」と酷評した。世界新聞協会は「改革の名の下に自由で批判的な討論を阻む最悪の権威主義政権になる」と批判している。

韓国では、いわゆる「徴用工訴訟」などをめぐっても、政権の意向が反映される司法の意図的な運用が問題視されてきた。改正案が成立すれば、政権側は使い勝手のいい切り札を手にすることになる。野党の次期大統領候補、尹錫悦前検事総長は「軍事政府時期の情報部や保安司事前検閲などと変わらない」と指摘した。

25日にも予定された国会本会議での採決は30日に延期された。与党側はいま一度、改正案が自由主義に与える致命的な損失を考慮しなおすべきである。

与党議員らは、元慰安婦への名誉毀損(きそん)を禁じる法案も国会に提出したが、これはさすがに取り下げた。慰安婦問題について新聞や放送、ネットなどで虚偽事実を流布した者を罰する内容だが、元慰安婦や関連団体に対して、誹謗目的で事実を指摘する行為を禁じることまで条項に盛り込んだ。

取り下げたのは、支援団体の前トップで寄付金や補助金流用の罪で起訴された尹美香議員も共同提案者に名を連ねていることから、当の元慰安婦らが「尹美香保護法だ」と強く反発したためだ。

自らに反する者は、法の名の下に処罰する。こうした姿勢は「法は共産党の指導下にある」と明言する中国と何ら変わらない。