安倍前首相辞任表明から1年 菅政権の「宿題」状況は

閣議に臨む菅義偉首相=27日午前、首相官邸(春名中撮影)
閣議に臨む菅義偉首相=27日午前、首相官邸(春名中撮影)

安倍晋三前首相が電撃的に辞任を表明してから28日で1年となる。後任の菅義偉首相は昨年9月の就任記者会見で「安倍政権が進めてきた取り組みをしっかり継承して前に進めていく」と述べ、新型コロナウイルス対策などの諸課題に取り組んできた。前政権からの宿題の進捗(しんちょく)状況はどうなっているか。

コロナ・経済

「爆発的な感染拡大を絶対阻止し、国民の命と健康を守り抜く。その上で社会経済活動との両立を目指す」

首相は就任会見でこう語り、コロナ対策とともに経済再生を筆頭課題にあげた。ただ、目玉政策である観光支援策「Go To トラベル」は中止判断が遅れて後手との批判を浴びた。

首相はワクチンを感染抑止の切り札と位置付け、トップダウンで接種の加速を進めた。一時の混乱を経つつも着実に接種回数は積みあがっている。

ただ、安倍氏と比べ、国民への発信や説明に力を尽くす姿勢が足りないとの批判はつきまとう。感染爆発の中、社会経済の正常化に向けた「出口戦略」も示すことができていない。

看板政策のデジタル化は体制整備が進み、司令塔となるデジタル庁が9月1日に発足する。また、首相は経済と環境の好循環を生み出す「グリーン成長戦略」も打ち出した。しかし、温室効果ガス排出量を2030年度に13年度比46%削減する目標は達成を危ぶむ声も強い。

外交・防衛

安倍政権で強化された日米関係は堅調だ。首相は4月に訪米し、バイデン大統領が就任後初の対面で向き合う外国首脳として会談。中国への対応で連携を確認し、共同声明には「台湾海峡の平和と安定」を初めて明記した。台湾へのワクチン供与も実現させた。

安倍政権が掲げた「自由で開かれたインド太平洋」は菅政権で広がりをみせている。日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」は3月、初の首脳会談を開いた。6月の会見で「対中包囲網なんか作らない」と語った首相だが、国際舞台では事実上の「包囲網」形成に役割を果たしている。

ただ、安倍政権が最重要課題に掲げた北朝鮮による拉致問題の解決は進展がない。安倍氏は退任間際の昨年9月、敵基地攻撃能力の保有を含めたミサイル阻止の対応策について「年末までにあるべき方向を示す」と後継首相に託したが、菅政権ではたなざらしが続く。

内政

内政では首相の政治決断が目立つ。不妊治療への保険適用は来年4月からの適用拡大に向けた検討が進む。高齢者の医療費窓口負担を2割に引き上げる医療制度改革は、首相自ら年収の線引きを決めた。東日本大震災からの復興も大きな宿題だが、首相は東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を決め、先送りの連鎖を断ち切った。

安定的な皇位継承の在り方に向けた議論は、小泉純一郎政権以来の課題となってきた。菅政権では有識者会議が中間整理で、旧宮家の男系男子に皇籍復帰してもらう案も打ち出した。憲法改正に向けては、安倍政権下で野党が引き延ばしを続けてきた国民投票法改正案が6月に成立した。

コロナ対応で首相の政権運営は厳しさを増す。周辺は「本人はアピール下手だが、決めるべきことは決めてきた」と訴える。(千葉倫之)