勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(298)

オールスター哀歌 MVPの賞品に喜んだ門田夫人

最優秀選手に選ばれた南海の門田
最優秀選手に選ばれた南海の門田

■勇者の物語(297)

この昭和58年シーズンからパ・リーグは1シーズン制に戻し、1位と2位が5ゲーム差以内であれば、最高5試合の追加試合を行う―という「変則プレーオフ制」で臨んだ。

だが、盛り上がるどころか、前半戦を終わって、西武が2位の日本ハムに14ゲーム差をつける独走状態。阪急はその日本ハムに0・5ゲーム差の3位。スポーツ紙は早々と「パ・リーグの灯は消えた」と書き立てた。

オールスターゲーム、当時は「人気のセ、実力のパ」といわれていた。

◇第1戦 7月23日 神宮球場

全パ 220 001 000=5

全セ 000 100 020=3

(勝)松沼兄1勝 〔敗〕松岡1敗 (S)江夏1S

(本)門田①(松岡)②(西本聖)テリー①(松岡)大石①(松岡)山本浩①(間柴)②(山内孝)

第1戦の最優秀選手(MVP)に2ホーマーを放った南海の門田博光が選ばれた。一回、ヤクルトの松岡から右翼席上段へ先制2ラン。六回には巨人の西本聖から右翼へ。この年から採用となった球宴の「DH制」。監督推薦で選出された門田が全パの4番に座った。

「とにかく、広岡監督に恩返しがしたかった。まさか選ばれるとは思っていなかったし、たとえ出ても代打かなと。それが4番で使ってもらえるなんて…」

門田とは〝男気〟の熱い選手。その思いがバットに伝わった。

門田にはMVPの賞品の乗用車、いすゞ「アスカ」が贈られた。実は3年前に門田は「足腰を鍛えるため」と自家用車を手放していた。純子夫人が「なら、私が免許を取ります」と訴えたが「お前には無理」と許可しなかった。その門田が「また乗ってみようかな」という。

「これで自転車でお買い物に行くのが減ると思うと、本当にうれしいです」。純子夫人が喜びの声をあげた。

オールスター戦には阪急から今井、福本、簑田、中沢、松永の5選手が出場。第2戦は本拠地・西宮球場で行われ、阪急のイメージガールを務めた16歳の早見優が始球式を務めた。2万9000人の大観衆。アストロビジョンに優ちゃんの新曲が流れた。7月にリリースされた『渚のライオン』。なるほど、西武が独走するはずや…と納得。(敬称略)

■勇者の物語(299)